妻との電話が切れた私は、茫然と立ち尽くした。
私「これ以上は……Yが危ない。」
ピリリリリ……ピリリリリ
私のスマホが鳴った。
高橋さんからだ。
私は直ぐに電話に出た。
高橋「もしもし!すみません!妻から今聞きました!お子さんをまずお連れします!」
私「あ、、、、はい。」
一体、妻は何をされているんだろうか……。
子供達が最優先だった妻が、電話口でセックスの快楽に弄ばれている。
見えないだけに不安が募る。
私は何が起きているのかを考えるだけで何も出来ず、ただ時間だけが過ぎていた。
ピンポーン
家のインターホンが鳴った。
家を出ると、子供達が一斉に家の中に駆け込んできた。
子供達「ただいまー!」
私「おかわり。一郎、ちょっとパパ、まりんちゃんのパパ達と話があるから、皆で遊んでてくれるか?」
一郎「分かったー!」
そう言うと、私は玄関ドアを閉めて、外で待つ高橋夫妻と話をする。
二人とも、私が近付いた瞬間に頭を下げた。
梢「本当にすみません!」
高橋「妻から話は聞いています!本当になんて言ったらいいか……!」
私「高橋さん達の責任じゃないですよ……ちょっと待って下さい……吉田社長が来ていたのは先程聞きましたが、一体何が……」
梢さんが、私にことの経緯の一部始終を話してくれた。
私「なるほど。Yらしい選択……ですね。私に電話しなかったのも、仕事中の私に電話をしない、Yなりのルールを守ってる。とりあえず、Yを迎えに行きたいんですが、しかし……」
高橋「私が行きます!」
私「いや、待って下さい。」
私は不思議な程、冷静になっていた。
普段は妻に子供扱いされているが、妻が冷静になれない場面に遭遇すると、不思議と妻の普段の冷静さが私に乗り移る。
そんな時は妻にはよく
『何でそんな冷静なの!!冷たい人!!』
と言われることもあるが、妻が冷静じゃなければ私が冷静になるしかない。
先程の電話の雰囲気、恐らく吉田社長と妻の二人だけではない。
何人いるか分からないが、こういう時に下手に動くと、助けられるものも助けられないし、逆に高橋さんも、無事でいられるか分からない。
ならば、警察か?
いや、そうすると、梢さんも罪に問われかねない。
何よりも、妻が1番嫌がるパターンだ。
となると、今出来るベストな行動は……
私「梢さん。吉田社長と向かったホテルは?」
梢「インター近くのラブホテルです。」
私「ならば、梢さんが迎えに行くのが1番です。」
高橋「しかし!」
私「今は耐えるのは私です。妻が戦っているなら、私は無事に帰ってくるのを待たないと。それに…下手に男の私達が行くと、向こうで揉めて、そうしたら、救えるものも救えない。」
高橋「なる……ほど。」
梢「分かりました!でしたら、今すぐに!」
私「それもお待ち下さい。とりあえず、高橋さん、吉田社長に連絡を取れますか?」
高橋「可能です。」
私「ならば、迷惑を承知でお願いします。I社で何かしらトラブルを今から起こせますか?」
高橋「トラブル?」
私「何でも構いません。とにかく、吉田社長をホテルからあぶり出せさえすれば。」
高橋「なるほど………。一つ…だけ。あります。」
今はその内容を聞いている暇はない。とにかく高橋さんに懸けるしかない。
私「分かりました。何でもいいです。そこは高橋さんにお任せします。奥さん、ご主人から連絡が来たらホテルの部屋にお願いします。」
梢「分かりました!」
高橋「私は家に一旦戻ります!」
私「お願いします。」
私が頭を下げると、高橋夫妻は車に乗り込み車を出発させると国道方向へ消えていった。
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