私は玄関の扉を開けて高橋さんと吉田社長を出迎え、スリッパを出した。
吉田社長も上機嫌で家に入ってきた。
吉田「いやー、何だか突然で申し訳ないねぇ。こうしてKさんの家に招いてもらえるなんて。」
私「とんでもございません。遠いところお越しいただきまして、本当にありがとうございます。」
私がリビングの扉を開くと、妻は立って吉田社長にお辞儀をする。
妻「はじめまして。Kの家内でございます。主人がいつもお世話になっております。」
吉田「奥様ですか。吉田と申します。そうかしこまらないで下さい。私の方こそ旦那さんには、うちの会社が無理を言って色々お世話になってますから。しかし、お綺麗な奥様だ。あ、これつまらないものだけど、ぜひ召し上がって。」
妻は白のロングスカートと白のロングTシャツの上に水色のカーディガンを羽織っていた。
妻「お気を使わせてしまい、申し訳ありません。ありがとうございます。」
そう言いながら妻は吉田社長からの手土産を受け取りながらお礼を言った。
私「どうぞおかけ下さい。今、妻に準備をさせますので。」
吉田「ああ。ありがとう。」
私「高橋さんもこちらへどうぞ。」
吉田社長と高橋さんは上座側に並んで腰掛けた。
妻はキッチンの冷蔵庫から冷やしたグラスと瓶ビールを出して食卓に並べたので、私は瓶ビールを開栓して吉田社長と高橋さんのグラスに注いだ。
高橋さんが私のグラスにもビールを注いでくれたところで、三人で乾杯をした。
妻は食卓に刺身やつまみを並べていき、吉田社長と高橋さんの空いたグラスにビールを注ぐ。
吉田社長は更に上機嫌になりながら妻に
吉田「いや、ありがとう。奥さんも一緒に座って飲もうよ。」
妻「ありがとうございます。」
そう言いながら、妻は席に座りグラスを手にしたので、吉田社長が妻のグラスにビールを注いだ。
事前に妻は私にこういった想定を確認をしていた。
当初妻はずっとキッチンにいるべきか悩んでいたが、吉田社長のグラスが空き次第、お酌をしてもらいたいこと。
吉田社長から一緒に飲むように勧められたら断らないこと。
妻はビールが苦手だが、何も言わずに一気にグラスのビールを飲み干した。
グラス自体は大きなものではないが、やはりビールの苦味が苦手な人にはそれでもきついだろう。
それでも、嫌な顔は一切出すことなく、妻は吉田社長から2杯目のビールを注がれていた。
次第にお酒も進み、焼酎や日本酒等をチャンポンのように飲むようになると吉田社長も高橋さんも大分お酒が入って陽気になっていた。
私もお酒が回ってきた感はあったが、あくまでも接待の一環なので、酔い潰れるわけにもいかない。
妻を見てみると、流石のガードの堅さは相変わらずで、吉田社長に合わせるように飲んでるように見せつつ、空いた器を下げたり、新しいつまみを出したり、氷を追加したりと動き回っていた。
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