吉田社長はタブレットから目を離し私を見ながら
吉田「Y君、君のご主人は相当頑張ったようだな。私が思っていたよりも相当早く仕事を進めたようだ。」
そう言いながらタブレットを私に見せた。
そこには、仕様書と大きく書かれた文字と、夫の働いている会社の名前が画面右下に書いてあった。
吉田社長はタブレットを自分の手元に戻し、また画面をスライドさせていった。
吉田「ふーむ。内容も非常に良い出来だ。これならばうちの会社にとっても、作業能率が上がって、利益が更に上がるようになるな。」
私「夫は休みを返上して働いていましたから。本当にいつも頑張ってくれています。」
吉田「梢君、高橋君も今回の仕事は私は称えてあげたいね。経理担当の責任者として我が社全体を見て今回の新システム導入を推し進めたのだからね。経理以外の営業関係の仕事も精を出しているし、それが今回は活きたようだ。」
梢「ありがとうございます。」
吉田「しかし、君達の夫は二人共に本当に運がないようだ(笑)」
私は梢さんと共に社長の言葉にどう返答するか分からなかった。
吉田「ビジネスの世界で生き残るためには、能力、実力があるのは当然なんだ。しかし、それ以外に強者であるためには、運、が必要なんだよ。そして、私はその運がどこにあるか嗅ぎ分ける嗅覚が強い。」
吉田社長は私を見た。
吉田「Y君、K君は非常に優秀だ。そして非常に立派なシステムを作ってくれた。導入も思ったより早かった。だから、私は更に損害額を上積みすることにしたよ。」
私「な!どうして!?」
吉田「出来上がったシステムが優秀すぎるんだよ。これだけ使いやすいシステムならば納期通りにいけばうちの会社はもっと利益を出すことが出来たよ。」
私「………そんな。」
吉田「非常に実力があるのに、私にとってより有利になってしまったようだな。」
私「どうすれば……。」
吉田「心配するな(笑)Y君は十分私の期待に応えているのだから。だが、まだまだ頑張らなければならないな。」
吉田社長の言葉は、私にとって絶望的な言葉に聞こえた。
吉田「梢君。君は今日は上がりだ。先に帰っていたまえ。」
梢「え?」
吉田「聞こえただろう。Y君は今日は遅くなるんだよ。夜にはなってしまうだろうな。」
梢「お子さんいるんですよ!?」
吉田「君が何とかしたまえ。」
梢「そんなこと出来る訳ないじゃないですか!」
私「梢さん……大丈夫。」
梢「え?」
私「幼稚園に電話入れとくから、子供達お願い出来る?」
梢「それは構わないけど……でも。」
私「ゴメン。お願い。1番上の子4時半くらいに帰ってくるから。主人が帰ってきて、私いなければ電話くるだろうから、そうしたら子供達迎えにいかせる。」
梢「うん。分かった。」
私「ゴメンね。」
梢「大丈夫よ。」
梢さんはガウンを着て私服に着替えると、部屋を出る間際に吉田社長に言った。
梢「社長、Yさんに無理させたら許さないですからね。」
吉田「大丈夫だよ(笑)君は子供の面倒を見たまえ。」
梢「Yさん。迎え、来るから。」
そう言って梢さんは部屋を出ていった。
※元投稿はこちら >>