私は課長にI社の説得を任せてもらいたい旨の許可を貰い、定時になって会社を出た。
最寄り駅に着いて、高橋さんと落ち合い、喫茶店に入った。
高橋「やはりうちの会社から連絡がいきましたか。」
私「えぇ。うちは現在、正式に請求された時の対応について上が検討をしています。」
高橋「申し訳ないですね。Kさんが悪い訳ではないのに。」
私「いえ、逃げてしまった業者を選定したのはうちの会社なんですから、選定過程にかかわった私にも責任はありますから。」
高橋「そうですか。ただ、まだ請求するとは正式に決まっていませんので。それで……お話というのは?」
私「金曜日に帰りの電車内で話されていた件です。」
高橋「あぁ。奥さんを差し出した、の話ですか。」
私「はい。」
高橋「1年前にね、あるイベントでとんでもないミスをした業者がいたんですよ。そこは自営業の男性だったんですが、社長はそのミスで生じた損失をその男性に求めたんですよ。損失を払わなければ、ミスを業界内で広めるぞ、と脅してね。当然ながら、自営業の小さな業者ですから支払えるはずがない。その時、その男性は奥さんを社長に抱かせて支払いを免れたんです。」
私「なるほど……。」
高橋「まぁ、Kさんの会社は組織も大きいですから、きっと支払い自体は可能なんでしょうが…」
私「支払う能力はあるでしょうね。プロジェクトに関わった人達が責任を取らされるでしょうが。」
高橋「やはり、そうですよね。そこで、Kさんの奥様を差し出す、ということで解釈してよろしいですか?」
私「それは、妻の判断に任せるしかありません。」
高橋「といいますと?」
私「私から直接、吉田社長と一夜を過ごしてくれ、とは言えません。ただ、その状況になった時に妻がそれを受け入れるならば。私は反対はしません。」
私がそう言うと、高橋さんは衝撃的なことを言った。
高橋「なるほど。実は………私の妻も、私のために三回程吉田社長に奉仕をしています。私の今の立場は私だけでなく、妻の功績が大きいんです。」
私「え!そうなんですか?」
高橋「あまり大きな声出さないで下さい。話したとおり、吉田社長は女好きなんです。うちの社では自分の奥さんを使って出世を勝ち取っている人が何人かいますよ。」
私「そういう社長さんなんですね。」
高橋「本来ならばそんなことは許されないんでしょうが。実際に枕営業がある業界ですから。ね。」
そう言いながら高橋さんは顔を落とした。
世の中には色々な業界があり、中には色情で出世を勝ち取る業界が存在するのも事実だ。
そして、私には高橋さんを責める資格はない。
こうして妻を差し出そうとしているのだから……。
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