私は高橋さんの囁きに心を揺さぶられた。
今回のプロジェクトは会社内でも、重要な案件だ。
もし、失敗したら、私だけでなく、課長や部長、それに重要な部分を任せている私の部下にも迷惑がかかる。
それに……私は地方の子会社へ出向させられ、数年間は戻れないだろう。
そうなれば今まで比較的順調に積み上げた自分のキャリアすら全て無駄になってしまう。
私は最寄り駅で高橋さんと別れて、バスの中で悩みに悩んだ。
私の悪い性癖が、また私の心に囁きかける。
『また奥さんが他の男に乱れる姿が見られるぞ。』
玄関を開けると妻はまだ起きていた。
妻「パパお帰り。」
私「あぁ、まだ起きてたのか。」
妻「うん。明日は?」
私「休み。」
妻「そっか。良かった。明日も仕事じゃ大変だもんね。」
私「ああ、、、、そうだな」
妻「どうしたの?何かパパ変。」
私「ん?そんなことないよ。とりあえず、風呂入るわ。」
妻「うん。分かった。」
私が脱ぎ捨てたスーツを妻は拾ってハンガーにかけた。
普段ならば自分でかけるのだが、疲れているとスーツを脱ぎ捨ててしまう癖があり、妻はそんな時は気を効かせてスーツを代わりにハンガーにかけてくれる。
私が風呂から上がると、妻はソファーに座り私が出てくるのを待っていた。
妻「で?何があったの?」
私「いや、特には。」
妻「パパ表情に出やすいんだよ(笑)何年一緒にいると思ってんの(笑)部活の試合の時だって、普段馬鹿なことしかしてないくせに、人一倍緊張してたし(笑)」
私「そんなことないだろ。」
妻「はいはい。私には分かるんだから。で、何があったか話してごらん?」
私「いや、もしだ、もしもの話で。数年間、地方に転勤なんて話になったらママどうする?」
妻「数年間?どれくらい?」
私「うーん。最低でも5年はかたいかな。」
妻「あー。そっかぁ。まぁ、その時はその時で何とかなるんじゃないかな。」
私「同期から出世が遅れても?」
妻「その辺は私には分からないからなぁ。主婦の私からしたら、別に出世するのが全てとは思わないけど。」
私「そっか。そらそうだよな。」
妻「とりあえず、皆元気ならそれでいいかな。」
私「何か少しほっとしたな。いや、今やってるプロジェクトで会社に損失が出るかもしれなくてさ。そうなった場合、地方に転勤になるかもしれないんだ。」
妻「そうなんだ。家のことは気にしないで大丈夫だよ。そうなったら何とかするから。」
私「分かった。ありがとう。」
妻は自然と私の体に抱きついてきたので、その日の夜、私は久々に妻と体を合わせた。
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