5月の末のことだった。
翔太が山本、森田と一緒にN渓谷の温泉に一泊二日で旅行したいと
言い出した。昨年部活の合宿で泊まったので、もう一度そこへ行きたい
というのだ。男三人が温泉に行って何が楽しいのかと父親が翔太に問うと、
沢歩きができるコースがあって、それが昨年非常に楽しかったというのだ。
健二はそれだったら自分とマリコも一緒に行こうと言い出した。
マリコは先日翔太の部屋で起こったことは夫に秘密にしていた。
始まったばかりの家庭生活を壊したくないからというのが建前だったが、
本音はイケメンの中学生3人とのプレイが意外と楽しかったためだった。
夫同伴なら三人とおかしな事にはならないに違いない。ならマリコには
反対する理由はない。翔太ら三人はどうかというと、本音は父親はいらないが
マリコとなら行きたいということで、賛成意見に固まった。
6月中旬、土日を利用して5人はN渓谷温泉に行く事になった。
土曜の朝早く5人は健二の運転する車でN渓谷に出かけた。
家から3時間近くかかる辺鄙な温泉宿である。
V字渓谷には清流が流れ、青々と木々が茂る山からは絶えず野鳥の鳴き声が聞こえていた。
何年か前に村おこしを兼ねて、村の予算を使って沢歩きのコースを設置した。
必要な装備もほとんどがレンタルで利用できる。
専門家を招いて設置したコースだったが、連休や夏休みを除いてはあまりお客は
来なかった。翔太たちの宿泊する小さな温泉宿も、その日の宿泊客は翔太一行以外は
定年を過ぎた一組の初老の夫婦だけだった。昼前に到着し昼食を5人そろって済ませると、
午後から男4人で沢下りをする予定だった。梅雨明けはまだだったが幸い天候はよく、
4人とも意気洋々と出かけるはずであった。
ところがここで奇跡が起こった。
突然健二のスマホが鳴ったのだ。こんな僻村まで張り巡らされた電話網と高性能のスマホの
せいで、健二は会社に呼び戻されることになったのだ。健二は金融関係の仕事をしているのだが、
担当していた会社が不渡りを出したらしい。こうして宿にはマリコと男の子三人が泊まることになった。
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