だが一方、彼女に対する想いを断ち切れない私がいた。未練たっぷりの私だが、妻以外で愛する気持ちを抱いたことはなかった。それほど、彼女のことを愛している自分がいた。それは二度と会うことが出来ないといった記憶の美化もあるかもしれないが、私にはそれだけが彼女のことを必要としている理由とは思えなかった。それほど彼女は私にとってはなくてはならない存在だった。だが、そんな彼女ともう会えないかと思うとやるせなさでいっぱいとなった。
父の話はどこか現実離れしているような感じで聞いていたが、彼女との思い出は紛れもなく現実ものであった。私は父との会話が終わると無言のままタクシーに乗っていた。
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