自宅に帰っても誰もいない空間に一人でいるのは寂しく感じた私は、久しぶりに実家に帰ろうかと思った。車を走らせること2時間。結婚するまで住んでいた実家は当時よりも確実に年月が過ぎてしまったことを表す佇まいへと変化していた。
インターホンを鳴らすと、母の声が聞こえてきた。
「はい。」
「ただいま。」
「えっ?ともくん?ちょっと待ってて。今玄関の扉を開けるから。」
ゆっくりと玄関の扉が開くと年老いた母の姿があった。
「まぁどうしたんだい?こんな時間に?」
「ちょっと寂しくなったんだよね。」
「そうかそうか、よぉ帰ってきてくれた。お帰り。」
「母さん、ただいま。」
あの頃と何一つ変わらぬ空気が流れているように感じた。
「あなたぁ、ともくんが帰ってきたわよ。」
「おっ、ともひさか。お前なんで帰ってきたんだけど?」
「お父さん、ただいま。色々とあってね。」
「まぁ飯でも食って風呂入って久しぶりに自分の部屋で寝たらどうだ?」
実家にはまだ私を受け入れてくれる温もりがあった。
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