すぐに妻は電話に出たが何か様子が異なっていた。私は妻の名前を何度も呼んだが返事は一切なかった。そのかわり、くぐもった声で「うー…うー…んぐー…んー…」と聞こえてきた。誰かに猿轡を咥えさせられているような声だった。
「そこにいるのはあの時のニセ警察官か?」
私は一気にたたみ掛けようとした。
「ほーっ、もうそんなところまで辿りついたんだな。ということはあの写真はSDカード以外にも保存はされているってことだな。なぁ取引といこうか?お前が持っている俺らの写真を全て渡すというなら、お前の妻、いやもう元妻かな?こいつの命は保証してやる。だが、変なことをしてみるとこいつの命がどうなるかわかんないぞ。」
私はしばし考えた。いくら離婚届を書いたからといって完全に妻のことを忘れたわけではなかった私は、妻の命と引き換えに出来るのであれば、この取引は安いだろうと思い「わかった。」と了承した。
「賢い選択だな。じゃあ今から自宅に戻ってこい。お前らの名前と住所はあの時に聞いて知っているんだ。おかしなことしたらどうなるかぐらいは想像つくだろ?」
「あぁ、わかっている。今から持って行くから妻には手を出さないでくれ。」
「あぁ、俺も人間だ。約束は守るぞ。ただし、1時間以内だ。それ以上は待てん。じゃあお前一人で来るんだぞ。わかったか?」
一方的に電話を切られてしまった。
※元投稿はこちら >>