過呼吸を起こす中、私は僅かな記憶を思い出していた。あれは本当に妻の姿だったのだろうか?そして、相手のことを。おぼろげながら記憶がクリアになっていった。その人物が着ていた服は私も記憶に残っていたのでおそらく妻で間違い無いだろうが、一瞬見えた相手の姿。私の記憶の中には存在しない人物であった。やや線が細いような感じに見えたが、それははっきりとは思い出すことが出来なかった。だが、間違いなく言えることは、このラブホテルに妻が確かに存在していたということだった。
私は呼吸が少しずつ落ち着いたのを感じたあと、ゆっくりと立ち上がりホテルを出ることにした。もし妻がホテルを出たというのならば、もうすぐ家に着くかもしれない。私は通りに出てタクシーを捕まえると、行き先を告げて出来るだけ早く目的地に着くようお願いした。いいタクシーの運転手だったこともあり、私が知らないような抜け道を駆使してあっという間に家に着いた。家の窓からは明かりが漏れていなかった。どうやら、妻よりも先に家に着いたようだった。
私は急いで着ていたものを洗濯機に入れて選択を回した。そして、風呂に入り石鹸で入念に身体を洗い痕跡を消していった。風呂から上がってきても妻の姿は見えなかった。私は一通りの部屋の掃除をして妻の帰りをソファに寝転がって待った。
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