“今晩、萩野君の家に泊めてくれない?”
こんなこと口では恥ずかしくて言えません。
だから文字で伝えました。
メッセージを受け取った萩野君はじっとスマホの画面を見ています。
それから私の目をじっと見つめたあと、無言で私の手を引き原付バイクの後ろに乗せてくれました。
ひとつしかないヘルメットを私に被せると、彼はエンジンをかけて勢いよく走り出しました。
原付バイクに2人乗り、しかも彼はノーヘル。
完全に交通違反です。
彼は人目に付かない裏道をすり抜けるように走っていきます。
私は彼の体に腕を回しピッタリと体を密着させました。
彼の背中越しに私の胸の高鳴りが伝わってしまいそうでした。
まるで初恋のような、そんなドキドキした気持ちです。
バイクが止まり、顔を上げると目の前には彼の住んでいるアパートがありました。
時間にすればわずか10分ほどだったでしょうか。
でも私には2人きりの長い長い逃避行のように感じられました。
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