リビングには不思議な空気が流れていました。
向かい合うソファの一方に萩野君、もう一方に夫と私。
そして息子は少し離れたダイニングテーブルの椅子にそれぞれ腰掛けています。
萩野君は困惑とバツの悪さからか、頭を抱えたままずっと下を向いています。
夫が話を切り出そうと体を前に起こします。
『うぅ、痛てて、君、なかなかいいパンチ持ってるじゃないか。ボクシングジムにでも通ったらどうだね?』
夫の冗談にも萩野君は微動だにしません。
『まずは君に謝らなくてはならない。すまないことをしたね。この通りだ、申し訳ない』
夫が床に膝をつき、萩野君に向かって土下座をしています。
それには流石の萩野君もたじろぎ、さらに混乱に拍車が掛かった様子でした。
『い、いったい、なんなんですか、もう、さっぱり分かんないですよ!』
夫は再びソファに腰を下ろし話し始めました。
『すべては私たち夫婦と家族のためだったんだ』
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