バキッ!
ヴグッ!
「あなた! ちょっと大丈夫?!」
玄関先で倒れ込む男のもとへ亜希子さんが駆け寄ってきます。
『あ、亜希子さん! 僕です、萩野です!』
あれだけ探しまわった亜希子さんが僕の目の前にいます。
しかし、声をかけても全然僕の方を見てくれません。
亜希子さんはたしかに今はっきりとこの男のことを“あなた”と呼んでいました。
あれだけ僕に“ひどい夫”だと泣いて訴えていた亜希子さんは、今その男をとても心配そうに抱き抱えています。
まったくもって状況が掴めません。
混乱する僕に男が倒れたままに言いました。
『まったく、今の若者は挨拶も知らんのか。まぁいい、君にも説明が必要だな。さぁ、中に入りたまえ』
僕は彼に言われるがままにリビングへと通されました。
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