萩野君と過ごした夜のことは決して忘れることはないでしょう。
温かい幸福感に満ち溢れたとても甘いひとときでしたから。
と同時に、私は罪悪感を強く感じたのです。
私の一時の気の迷いのせいで、20歳以上も歳の離れた男の子の家にあがりこみ、そして幾度も体を重ね、彼の大切な童貞を奪ってしまったのです。
さらに私は家族をも裏切ることになってしまいました。
彼は私のことを心から愛してくれているでしょう。
でもいつかはそれが重荷になるときがくるはずです。
同年代の女の子と普通の恋愛をしてほしい。
私の複雑で辛い人生に彼を巻き込むわけにはいきません。
私は彼の前から消えるべきなのです。
私に与えられるべき愛情はあの夜に彼にすべて与えてもらいました。
もうそれで十分幸せです。
私は棒のようになった脚をなんとか前に動かしながら、記憶を頼りに自宅まで戻ってきました。
もうどれだけの時間と距離を歩いたか分かりません。
「ただいま...」
平日の昼間ですから、ただいまを言ったところで家には夫も息子も誰もいません。
朝から何も口にしないまま歩き疲れた私は、そのまま玄関にへたり込み意識を失ってしまったのです。
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