亜希子さんと初めてひとつになれた夜。
僕達は朝まで何度も求め合い愛を確かめ合いました。
僕はいつの間にか寝てしまっていたらしく、目が覚めたのは翌日のお昼前のことでした。
その日午前中から入っていた大学の講義は完全にすっぽかしてしまったことになります。
そのとき、僕はハッとしました。
ベッドに寝ていたはずの亜希子さんの姿がどこにも見当たらないのです。
もちろん風呂場やトイレにも。
脱衣所に置いてあった亜希子さんの服は全部無くなっていました。
代わりに僕が貸したTシャツだけが綺麗に畳まれて置いてありました。
電話を掛けてもメッセージを送っても何の反応もありません。
僕は慌てて着替えを済ませ、ボサボサ頭のまま原付バイクで走り出していました。
とりあえずスーパーに行くしかアテがありません。
裏口に回る時間すら惜しかった僕は、客用の入口からスーパーに入りました。
バイト仲間のおばさん2人が僕を見つけ声をかけてきます。
「あれ~、萩野君、今日は夜からでしょ?」
「ほんとどうしたのよ? そんなに慌てちゃってぇ」
『はぁ、はぁ、亜希子さん、、瀬野亜希子さんは来てませんか?』
僕は必死の形相でおばさん達に聞きました。
「瀬野さん? 少し前に店に来たんだけど、そのままパートを辞めて帰ってっちゃったのよ」
「人手が足りなくて困ってるっていうのに、自分勝手もいいとこよ、まったく」
タイミング悪くすれ違いでした。
しかも、亜希子さんがパートを辞めた?!
僕の頭の中はますます混乱しました。
『すいません、僕、今日の夜のバイト休みます。店長にそう伝えてください、ほんとすみません!』
僕は、呆気にとられているおばさん達に頭を下げて、スーパーを後にしました。
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