次の日…。
この日も19時に帰宅をした僕。しかし、近くの駐車場に車を停めても、すぐには家には向かいません。向かったのは、奥村さんのお店でした。
もちろん、閉店しているため、お店が真っ暗な可能性もあります。ただ、訪れる理由のない僕には、この日しかなかったのです。
『いるかなぁ~?いないだろうなぁ~?』、そう思い、路地の角を曲がります。『あっ!…、』、そこには薄暗い灯りが見えました。
その灯りは奥村さんのお店から出ているもので、僕の歩きもスピードが上ります。
誰もいないと思いお店を覗き込むと、そこに人影を見つけるのです。その人影は、『あら、お兄さんっ~!』と声を掛けて来ました。満智子さんです。
『昨日はありがとうねぇ~。調子いいよ~。』とお礼を言われ、『どうしたのぉ~?』と聞かれます。
そこで、僕こう答えたのです。『あの~、もらったお金多いです。こんなにいらないので、半分お返しします…。』、これが僕の考えたここへ来るための理由。
だから、次の日にしか使えないのです。
しかし、『いいのよぉ~。もらって~。私が納得してお支払いしたんだから。返さないでよ~。』と言われてしまいます。
彼女からの、この言葉で決まりのはずです。しかし、それでも『ほんと、半分でいいんで…。』と返しました。これは完全に、『いい人』を演じたのです。
もちろん、満智子さんが受け取るはずはありませんでした。ただ、『いい人。』と言うのは伝わったかも知れません。『上がって~。お茶でも出すから~。』、彼女のそれが理由です。
初めて、この家の中に招かれました。下着泥棒をした時に一歩だけ土足で上がり込んだので、正確には2回目ということになります。
そこには大きなリビングがあり、真ん中にテーブル、それを囲うように低いソファーが並べられています。
満智子さんは奥の剥き出しのキッチンでお茶の準備をしていて、僕も部屋全体を眺めながらも、彼女を見てしまいます。
隣の部屋とは襖で遮られていて、きっとその部屋があの下着の干してあったあの部屋になるのでしょう。負い目からか、まともに見ることが出来ません。
キッチンからはコーヒーの香りがし、『どうぞぉ~。』とすぐに僕の前へと出されます。『お砂糖とミルクは?』と聞かれました。
『あっ、どっちもください。』と答えた自分に、反省をしてしまいます。『ここはブラックだろ~。』、と自分に言ってしまうのです。
しばらくして、テーブルの対面にもう1つのカップが置かれました。そこに、満智子さんが『よいしょっ。』と腰を掛けます。
そして、初めて満智子さんと話をすることになりました。
『お兄さん、いくつ~?』
『22です。』
『22っ?!若いねぇ~。5くらいかと思った。』
『そうですか?』
『お母さん似やねぇ~。なんか、可愛いもん。』
『よく言われます。奥村さんはおいくつですか?』
『ハッ!それ聞きたい?おばちゃんの年とか、気になる?』
『ああ、すいません。いいです、いいです。』
『いくつに見える~?』
『55くらいですか?』
『惜しい~!もうチョイ!』
『4?』
『なんで下がった~!?ナナぁ~。57よ~。』
『57歳ですかぁ~。お綺麗ですよねぇ~?』
『ほんとぉ~?ありがとねぇ~。お世辞でも、おばちゃん自信がつくわぁ~。』
『いやいや、ほんとですよ。お綺麗ですよ。』
『ありがとー。100点っ!その答え、100点っ!』
商売をしている時と同じ顔をしてくれたのでしょうか、とても明るいおばさんでした。おかげで、僕も助かります。
『彼女は~?』と聞かれ、『いない…。』と答えると、笑いながらもちゃんと僕を励ましてもくれたのです。
そんな年下の僕を相手にしながらも、ちゃんと大人として話をしてくれる満智子さん。真面目な話をするときには、真面目な顔も見せてくれます。
その真面目な目に、僕の顔も引き締まってしまうのです。しかし、僕の心の中にある言葉が呟かれていました。それはあの奥村のおじさんの言葉…。
『毎晩はやらんわぁ~。2日に一回や。…、2日に一回や…、2日に一回や…、2日に一回や…、』
こんな真面目な顔をしていても、65歳を過ぎたあんな小太りのおっさんと2日に一回、セックスしまくっていたおばさんです。
僕には、まだそんな目でしか見ることが出来ません…。
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