胃袋が満たされ、疲れた友里はソファーで俺にもたれてすやすやと寝息たてだした。
横にしてコートを掛けて休ませる。
俺は天気予報をみたかと、服を着て事務所へ行き本社へ状況報告のメールで、俺と友里が帰宅困難で事務所にいることわ物流が麻痺して仕事の再開にメドが立たないこと、取引先へ臨時休業の案内を毎日更新することなどを報告した。
日は落ち、辺りは相変わらず静まりかえって物音さえしない。
ふと、窓際に近づき外へ目を向けると、灯りが動いた。結露で曇った窓を手で拭いて目を凝らすと、雪をかき分け近付いてくる人影が雪灯りで見えた。
宏子だ、宏子に違いない!
休憩室で寝ている友里を起こして、服を着させ、二人が関係したことは、絶対気付かれないように気をつけるとこを確めた。友里を休憩室に残し、事務所のデスクで座る。
しばらくすると玄関先で雪かきする音が聞こえた。
俺は、ベンチコートを羽織り手袋をつけ長靴を履いて、ドアの内側からノックして宏子なのかを確認した。
やはり、宏子だった。
何とか宏子が雪を除けてドアが開くようになり、宏子が大きなリュックを背負っていることに気付いた。
「こんな遅くに歩いて来てくれたのか、ありがとう」
「二人が心配だったし、家にいてもだれもいないので、差し入れ持ってきました」
他意はなく、本心だと思った。しかしこのあと友里が思わぬ行動をとるとは予想もしなかった。
事務所に戻りが宏子
「明日は朝から雪かき三人でしようと思って、インスタントしか食べてないって言うから、カレー作って来ました」
とリュックから、大きなタッパーを取り出した。ブランケットやタオルを取りだし
「私もここで泊まります」
「ありがとう、でも、ソファーしかないし、せっかく来てくれたけど、寝る場所がないぞ」
「何とかなりますよ、友里ちゃんは?」
「休憩室にいるよ」
休憩室に向かう宏子のあとからついていく。
休憩室に入ると
「歩いて来たわよ」
「課長、本来に来たたんですか」
「電話であんなふうに言われたら来るわよ、私の性格わかってるでしょ」
「私がそんなにふしだらな女に見えてたなんて、ショックです」
「本当に昨日から何にもなかったんでしょうね」
来るなり、喧嘩腰の宏子に友里も負けじと言い返す
「当たり前じゃないですか、部長がそんなことする訳ないし、私も万が一迫られても絶対拒みますよ、何でそんなに疑るんですか?」
「理由なんてないわよ、女の勘よ。電話の声がいつもと違ってたし、甘えた声だったわよ」
「ストーブの前で暖まってたから、そんな甘えた声じゃなかったはずです。言いがかりですよ」
「あらそう、じゃあその鞄から出てる下着は何なの?帰る予定の人が替えの下着何か盛ってくるの?」
「これは、部長が昨日買い出しに行かれた時に、わざわざ気遣って買ってきて頂いたから着替えただけです。部長な聞いてください」
「そうなですか部長」
「ああ、そうだよ、課長は何でそんなに問い詰めるの、俺も彼女もそんなことする訳ないし、おかしいぞ」
ティッシュで鼻をかみ、捨てようとしてゴミ箱のふたを開けた宏子。しまったと思ったが手遅れだった。
「えっ、何でこんなとこにスキンがあるわけ?ほ~らやっぱり。あ~あやったんだ、思った通り友里ちゃん部長とエッチしてたんだ。厭らしいっ!部長も部長ですよ、部下に手を出すなんて最低!本社に報告しなきゃ」
鬼の首をとったように勝ち誇った表情で言う宏子に友里は、とうとう堪忍袋の緒が切れた様子で
「課長!あたなだって人のこと言えた義理じゃないでしよ!これは何?なんて言い訳するの?」
友里は自分のスマホを宏子に見せる。
「誰よ、人のエッチしてるとこ写すなんて」
しらを切る宏子に友里が
「これ、旦那のスマホからコピーしたんだけど、写してるのはうちの旦那で、間違いなく相手は課長ですよ!」
「・・・」
「部長のことを誘ったのは、確かに私だし、もめ事にするなら私も黙っていられなくなるけど、どうしますか?」
形勢逆転、友里はたたみかけて
「私たちのことを本社に言うなら、私もあたなと旦那を訴えることにするわ、その前にこれも見てよ」
またスマホを宏子に見せる。
絶句する宏子
「これって、うちの上の息子だよね、太もものホクロは間違いなくむすこのものよ。あなた、旦那だけならまだしも、息子までたらしこむなんてどうかしてない?」
顔を紅潮させ、怒り爆発の友里に、無言のままうなだれる宏子。
宏子の乱れた姿を見たくなり、友里のスマホを見せてもらう。そこには、友里の息子の竿をしゃぶり目線を上に上げている宏子の姿があった。
後でゆりから聞くと、息子達二人とも宏子と関係し、血は争えないのかスマホに画像を残していたのを全部コピーしておいたそうだ。
いつか宏子をギャフンと言わせてやろうと思っていたらしい。
「よりによって自分の部下の旦那と息子達と関係を持つなんて、非常識にも程がありませんよね」
ここから友里の恐ろしい策略が始まった。
「課長、いえ、宏子さんどう償って頂けるのかしら」
「・・・。」
「黙ってないで、何とか宏子言いなさいよ!」
パニックなのだろう、宏子はうつむいたまま無言を通す。
「何も浮かばないなら、私の要求を全て飲んでもらうわ、いいかしら?」
「・・・、何?」
「鼻の高いあなたから、まずは謝罪して下さいな」
「・・・」
「あら、謝らないってことは悪いことをしてないって思ってるんだ」
「ごめんなさい」
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