かなり前のことになるが、野球観戦に行った際、球場内で突然まゆみの動悸が激しくなり歩けなくなる時があった。
旅行の疲れが出たのだろうと思われた。薬を服用し安静にしていれば大事には至らないが、球場から出るまでは1kmほど歩かなければならない。球場内の座席も階段での移動が多い。
まゆみの旦那も椎間板ヘルニアを長い間治療しているので、妻とはいえ背負うことは難しかった。
私の妻にとってまゆみは大の親友である。妻は私にまゆみを助けるため背負ってといい、私も出来ることはしようと思っていた。男も女もなかった。
ホテルに戻り休養した。少し休んだら何もなかったようにまゆみは回復し、夕食も皆で摂ることができた。皆がホッとし、全員に笑顔が戻った。
まゆみの心臓にはペースメーカーが入っているし、薬も全く問題ない。でもまゆみにとっては身近に理解してくれる人がいることがなによりも心強かったのだろう。私もそのその1人になれたのだと思うと嬉しかった。
まゆみはそのことについて何も語らなかったが、覚えていてくれたのだろう。
「この背中...」
まゆみはそっと後ろから抱きついてきた。
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