佐久間さんの寝室の照明が落とされました。ベッドの枕元に置いてある小さなスタンドが照明が灯り、そして化粧鏡に付いている照明が点灯しています。
佐久間さんは、その化粧鏡に座っていました。全裸姿でベッドに横たわっていた僕は、『化粧するん?』と彼女に声を掛けます。
『ちょっとだけねぇ~…。』と返してた彼女に、『しなくても、きれいやわ~。』と言ってあげますが、『男性の方への礼儀だから。』と言われるのです。
『それにあなたが起きて、「このおばちゃん、だれぇ~?」って言われてたら困るし…。』と笑顔で答えてくれるのでした。
『ということは、お泊まり~?』
『なにが?』
『お泊まりしていいの~?』
『帰ったらいいよ。』
『泊まる、泊まる、全然泊まるっ!』
『なに喜んでるよ~?』
『きぃ~めたっ!泊まりぃ~…!』
『帰ってよぉ~!私、一人で寝るから。』
『いーやっ!由美子さん、抱いて寝るし~。』
『勝手にしたらいいやないのぉ~。起きたら、隣でお婆さんが寝てるわぁ~。』
『チュウして起こしてなぁ~。』
『やらんわぁ~。』
はしゃぐ僕とは違い、彼女は冷静に答えていました。顔全体にクリームを塗り込み、唇には薄くルージュが塗られていきます。
慣れた化粧にも、完成には少し時間を要しているようです。それもそのはず、彼女にも不安があったからです。
一週間前の時には、彼女が満足することなく、事を終えてしまっています。『セックスの相性』という意味では、二人はまだ未知数なのです。
『自分がうまくリードをしてあげないと…。』、この時彼女はそう考えていたのです。
そして、やはり自分自身の身体の回復でした。やる気満々で喜んでいる僕とは違い、自分は『本日、二人目の男』。
午後から入ったホテルで、池本からの二度の射精を受け止め、数え切れないほどその男に逝かされてしまった身体です。心配は尽きませんでした。
ようやく彼女が化粧を終え、こちらを振り返りました。薄暗い明かりのなか、彼女の姿が映し出されます。
ビンクの生地に黒で模様が入った、セクシーな下着が身に付けられていました。化粧鏡の照明が消され、明かりはベッドのスタンドだけとなります。
更に薄暗くなった部屋を、彼女のシルエットだけが動き出すのです。そのシルエットは大きくなり、僕の入っている布団を目繰り上げました。
腰から入ってきた彼女の体温を感じ、それは足や身体を入れてくる度に全体へと広がって行きます。
『さぁ、寝よ寝よ…。寒い、寒い…。』、佐久間さんの本心ではない言葉が吐かれ、彼女の細い身体はは僕の隣へと寝転がるのでした。
静寂を保てたのは一瞬のこと。僕の鼻には、化粧を仕立ての独特なあの香りが広がっています。僅かに香水をつけているのか、違った香りも紛れていました。
僕の視界には彼女の顔のアップがあり、掛けていた布団はすでに半分以上が剥ぎ取られました。『由美子さん…。』、柔らかな僕の声が飛びます。
しかし、その声のトーンとは裏腹に、彼女を求める僕の勢いはとても強いものになったのです。
『ゆっくりしよ…、優人くん、ゆっくりしよ…。』、気付いた彼女から落ち着かせようと、言葉が掛かります。
彼女の言葉は逆効果でした。彼女の『ゆっくりしよ…、』が、『やめてぇ~!』と感じてしまい、僕の『男』に火が付いてしまったのです。
自分でも分かるほどに、『ハァ…、ハァ…、』と荒い息をしていました。ルージュの塗られた唇を奪い、それは彼女の歯と当たるほどに求めてしまっています。
僕のために、せっかく着込んでくれたと思われるピンクのセクシーなブラジャーも、『ジャマ。』とばかりに躊躇なく首元へとずらせてしまいました。
右手は、彼女の小さな左の乳房を掴みあげ、ただがむしゃらに揉んでしまうのでした。
『アァ…、アアァ…、』と、それでも感じようとしてくれる彼女の口からは、女の声があがり始めています。
舌を合わせれば、彼女の方から絡ませてくれ、『全てが順調。』、僕はそんな錯覚さえしていました。
しかし、彼女は違いました。『これはよくない…。このままでは…。この子、この前の二の舞いになる…。』、そう考え始めていたのです。
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