二人の唇が激しく重なっていました。それは僕よりも佐久間さんの方で、もうあの冷静な彼女ではありません。
熟女独特のイヤらしさなど見せようともせず、ただひたすら唇を押し付けて来るのです。
不意に彼女が笑います。あまりにも自分からキスをせがんだこともありますが、抱き合っているお互いの服がびしょびしょなことに気づいたからです。
『お風呂、入らんといかんねぇ~?』と、濡れた自分の服を見て、彼女は呆れながらそう言うのでした。
僕から離れ、風呂場へと向かう佐久間さん。車を降りるまでは着こなせていたであろう紺のワンピースも、雨に濡れた重みで垂れ下がってしまっています。
片方の肩がだらしなく現れ、雫が床を濡らします。そんなことなど気にもせず、風呂場へと消えて行くのでした。
しばらくすると、風呂場からはお湯が灌がれる音がして来ます。しかし、佐久間さんが現れません。浴槽でも洗っているのかと思いました。
そんな彼女が現れたのは、その3分後のこと。その姿を見て、僕は驚きます。現れた佐久間さんが下着姿だったからです。
それも、黒い生地に赤い薔薇の花のような刺繍が施された、上下お揃いのセクシー系のもの。あえて彼女は、その姿で現れました。
それは、ホテルを出る時に着替えたものでした。池本のために数枚のセクシー下着を用意した彼女でしたが、帰りに履くノーマル下着を忘れて行ったのです。
ほとんどの下着は、彼によって濡らされてしまい、残りはこれしかありませんでした。
目のやり場に困る僕を素通しし、彼女はリビングに置いてあったあるものを手にします。デートに持って行っていたバッグです。
もちろん、これも雨に打たれて濡れてしまっています。そのバッグに手を入れると、中身を1つずつテーブルへと置いて行きます。
ビニール袋に入れられた紫の下着。同じく、別のビニール袋に入れられた黒の下着。更にビンクローターに、バイブが1本。
ローションの瓶に、ホテルから持ち帰ったと思われる未使用のコンドームが2個取り出されました。そして、彼女はこう言うのです。
『これ見て、おばちゃんどう思う~?』
僕は何も答えられませんでした。取り出されたモノに驚いた訳ではなく、わざわざ僕に見せようとする意図がわからなかったからです。
佐久間さんは床に座り込み、グッタリした感じでビニール袋を手に取ります。その封が開かれると、濡れていると思われる下着を取り出すのです。
少し眺めたかと思うと、『これ見なよ~!私が濡らしたんよぉ~!』と言って、半ば僕に投げつけて来ます。
キャッチした僕の手は、すぐにその下着が濡れているのを確認するのでした。それを見た彼女は、『私、最低やろ~?…、』と言ってしまうのです。
更にビンクローターが握られ、バイブが手に持たれます。『これも、こっちも、さっきまで全部マンコに入れてたんよぉ~?…、アホやろ~?…、』となぜか自分を責めているのです。
そんな彼女の姿に、僕はただ口を閉ざしてしまうのでした。
『ユウくん?…、』、無言だった静寂を破ったのは、彼女の僕を呼ぶ声です。『はい…。』と答えた僕に、彼女はこう言います。
『もう決め…?私、こんなのだから…、どうするのか、もう決め…。全部さらけ出したから…、これで全部…。自分で決めて…。』と。
考える必要はありませんでした。座った彼女に寄り添い、下着姿の佐久間さんを抱き締めます。途端に、彼女の目からは涙が溢れてしまいました。
『あんた、ほんとそれでいいの~?』
『ん?』
『さっきの男に抱かれて来たんよ?見たやろ~?』
『うん。』
『ユウくん待ってくれてたのに、あの男と一緒やったんよ?』
『勝手に待ってただけ…。』
『あんた、1時間半も待ってたんでしょ~?私に言いたいことあるでしょ~!』
『あるよ~。』
『なら、言いなよっ!変態女って言いよっ~!』
『2時間…。』
『えっ?』
『2時間待ってた…。ちょっとやで…。』
涙目の彼女の目が開き、そしてまた大粒の涙が溢れていました。彼女の身体は、僕の胸に預けられます。
佐久間さんは抱き締められたいのではありません。ただ、バカな僕に触れたいのです。
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