『カレーの匂い、イヤじゃない?』、キスの合間の僅かな時間を利用して、口臭を気にした佐久間さんが僕に声を掛けて来ました。
しかし、彼女の言葉など気にも止めず、ようやく辿り着いた彼女の唇を更に奪って行くのでした。
時間は30分前までさかのぼります。
テーブルには、彼女の作ってくれたカレーライスとマカロニサラダが並べられました。『いただきますっ!』と言って、スプーンはカレーを掬い上げます。
スプーンにはニンジンが現れ、『これ、僕が切ったものだ。』と少し自慢げにも思えるのです。
『おいしい?』と聞いていた彼女に、『おいしい、おいしい、』と笑顔で返します。しかし、頭の中はそうではありません。
やはり、さっきしてしまったキスのことばかりを考えてしまうのです。
確かに、それは『唇』でした。薄いルージュが塗られた女性の唇。でもそれは、若々しいものではなく、年を重ねられた女性の唇でした。
僕の思っていたものとは、少し違ったものだったのです。
笑顔で食事を頬張り、飽きさせないように会話をしている佐久間さんはどうでしょうか。実は彼女も同じで、僕とのキスのことばかりを考えていました。
『ただの軽いフレンチ・キス』、そう割り切ろうとしていた彼女ですが、やはり若い男性の唇は違いました。
キスの経験も豊富な彼女も、20代の男性の唇となると、彼女自身も20代に戻る必要があります。それほど遠い記憶となるのです。
更に彼女の心は、『次のステップ』へと進んでいました。動画サイトの若者のように、僕が自身を歓ばせてくれるシーンまで思い描いていたのです。
食事を終え、深いソファーに座り込んだ僕に背を向け、お尻を突き出し気味で食器を片付け始めたのも、彼女なりの『誘惑』でした。
僕はソファーにもたれ掛かりました。大盛りサイズのカレーライスではありませんでしたが、やはり楽な体勢を望んだのです。
立ち上がった佐久間さんが僕の目の前に現れ、『お粗末さまでした。』と言って、僕の食べた食器を片付け始めます。
背を向けていて片付けている彼女の細い身体を、ソファーの僕は殿様のような体勢で見てしまうのです。彼女は、一度キッチンへと向かいます。
テーブルには、もう1回分の食器が残されていました。僕はソファーから足を降ろし、正常な座り方に戻すのです。
そこへ、再び佐久間さんから現れます。彼女は僕の目の前に立ち、背を向けてテーブルの食器に手を掛けます。
僕との距離が近いためか、『おっとぉ~。』と言ってバランスを取り直すのです。その時、明らかに彼女の腰が僕の方に突き出されました。
その瞬間、僕の左腕は佐久間さんの細い腰に回り、同時に彼女の身体をソファーへと引き寄せてしまうのです。
彼女の小さなお尻が、僕の太股の上に乗り上げ、完全に座り込んだ格好になります。『ちょっとぉ~!ふざけんのぉ~!』と僕に注意の言葉が飛びます。
それでも僕はソファーに深くもたれ掛かり、自分の両足を左右に大きく開くのです。その出来たスペースに、彼女の小さなお尻が落ちていきます。
『もぉ~!ほんと、ふざけんのよぉ~!』と彼女は叫びますが、僕の両手は後ろから彼女の身体を抱き締めてしまうのです。
『この子、ほんまにぃ~…!』、ついにその行動を起こし始めた僕に、彼女はそんなやりきれない言葉を浴びせ掛けます。
しかし、もうそれは本心ではないのかも知れません。事実、僕をはねのけようとはしていないのですから。
僕の唇は、カールの掛かった佐久間さんの後ろ髪を掛け分け、彼女のうなじへと達していました。そこに唇を押し付けます。
それは『キス』と言うものではなく、その唇から彼女を感じようとする行為でした。感情が抑えきれず、『好き…、好き…、』と何度も口走ってしまいます。
僕の唇は、うなじから右側の首筋へと移動を始めていました。唇からは舌が飛び出し、彼女の細い首筋を舐め始めるのです。
佐久間さんの動きが完全に止まっています。それをいいことに、彼女に回した僕の両手は、乳房を探すように胸を揉み始めます。
しかし、思っていた場所にそれはなく、『やっばりおばあさんだから、垂れ下がっているのか…。』と、もっと下を探してみます。
それでも、それは見つかりません。すると、『おばちゃん、ペチャパイよ…。胸、ないんよ…。』と彼女が言ってくれたのです。
その言葉を聞き、僕は喜びました。別に、『貧乳』の女性が好きな訳ではありません。彼女が嫌がってないのがわかり、それが嬉しかったのです。
僕は彼女の肩に手を掛け、彼女をこちらへと振り向かせます。身体は大きく腰から回転し、きっとこの体勢は佐久間さんには窮屈だったと思います。
それでもそれを気にすることなく、僕の唇は彼女の唇を奪ってしまうのでした。
カレーライスを食べたばかりの二人です。合わさるお互いの唇からは、あの独特な匂いがしていたのでした…。
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