【短編エピソード5】新入り患者
入院して2週間ほど過ぎた頃、僕の隣のベッドに新しい患者さんが入ってきました。入院説明を聞いているその横顔は、大学生っぽい雰囲気のチャラそうなイケメンくんです。
ただ、その入院説明をしている看護師さんというのが、森咲さんその人ではありませんか。僕は素知らぬ顔で窓の外を見つつも内心は嫉妬していました。僕が森咲さんと会話できるのは検温のときくらい、しかも毎回ではありません。廊下ですれ違うことも稀だし、仮にすれ違ってもなんと話しかけたらいいのやら。なのに、新入りのイケメンくんはときどき冗談を飛ばして、森咲さんを笑わせています。僕は不愉快になり仕切りのカーテンを勢いよく閉めました。
「それじゃあ、これからの入院中はよろしくお願いしますねー♪」
説明が終わったらしく、森咲さんが彼のベッドから離れたようです。“ついで”に僕の様子も伺いに来た森咲さん。カーテンをサッと開けて異常ないことを確認すると一言も話さずに行ってしまいました。僕の行き場のない嫉妬心はさらに募るばかりでした。
ほどなくして、イケメンくんの友人らしき数人の男女がぞろぞろとお見舞いにやって来ました。
『おーい、ヒロシ! 生きてっかー?』
『うわ~、お前、たかが喧嘩で怪我なんかしちまって、超ダセぇ 笑』
「ヒロシくん、大丈夫~、もう心配したよぉ。ほら、ユキも来てるよ」
「ヒロくんのバカ...もう死んじゃったかと思ったじゃん...」
彼らは口々に心配してるのか貶しているのかよく分からない言葉を掛けています。『バーカ、ちょっとあばら折っただけだって。そんなに大騒ぎすんなってーの』とイケメンくん。それからしばらくの間、くだらない話でガヤガヤと盛り上がってくれちゃっています。
「おいおい君達、普通は他の患者さんに気を遣って、オープンスペースあたりで静かに話をするもんだぞ!」と、一喝したいところですが、あいにく今の僕は治療に専念している患者の身。余計なことに力を使うわけにはいかないのです。ん?ビビってる? いやいや、社会人ともあろうものがこんな若造のことなど相手にしてはいられないのです。ふぅ...
それから、一人また一人と帰っていったようで、しばらくするとだいぶ静かになりました。イケメンくんとその彼女さんの2人だけになったらしく、カーテン越しでもなんとなくカップルの甘い雰囲気が漂ってきます。僕もようやく昼寝ができると思った矢先、なにやら2人のヒソヒソ話が聞こえてきました。
「ダメだよぉ、こんなとこじゃダメだってばぁ~」
『頼むよ、ユキ、ちょっとだけ、な? な?』
「絶対バレちゃうよぉ、もぉ、、隣に人いるしぃ~」
『カーテン閉めてるし、静かにすればバレねーって、な? な?』
先日、僕が美優に迫ったようにイケメンくんもその彼女さんに迫っているようです。僕も人のことをあまり言えませんが、それがまた相当しつこい感じなのです。僕は試しにかるく寝息を立ててみました。
『スゥー、、ハァー、、』
すると彼らに動きがありました。
『ほら、隣のヤツ寝てるって、な? な?』
「うそぉ、ほんとにぃ?」
『聞いてみろって、スーハー言ってんじゃん、今なら大丈夫だって、な? な?』
「うん、ほんとだ、、じゃあ、ちょっとだけだよ、もぅ」
イケメンくんの押しに、ついに彼女さんが根負けしたようです。僕の寝息作戦は成功しました。
ガサゴソとズボンを脱ぐ音が聞こえます。それからベッドがギシっと軋む音が聞こえ、彼女さんもベッドに上がったことが分かります。声を押し殺しているようで、聞こえてくるのは吐息ばかり。しかし声は聞こえずとも、すぐにお互いのやらしい音が聞こえはじめました。
クチュ...グチュ...
チュパ...ジュポッ...
その音はベッドの頭と足元の両側から聞こえてきます。まさか大胆にもシックスナインをしているということでしょうか。僕はカーテン1枚隔てた向こう側の状況が気になり、ちゃっかり勃起してしまいました。
しばらく聞き耳を立てていると、徐々に声が漏れ聞こえてくるようになりました。
「はぁん、、ぁん、、そんなにしたらぁ、、気持ちよくなっちゃうよぉ、、」
『マジですっげー濡れてくるし』
「やぁ、言わないでよぉ、もう、、」
『ユキ、お前、、こんなとこで弄られて余計感じてんじゃねーのぉ?』
「んぅ、もう、ヒロくんのいじわるぅ、、」
『なぁ、、そろそろ、いいだろ? 入れたくてたまんねーわ』
「うん、、じゃあ、ゴム付けるね、、、」
このカップルは病室のベッドで本当にセックスまでするつもりのようです。僕はその大胆さに驚きつつも、すっかり勃起してしまった自分のアソコを握りしめていました。やがてベッドがギシッギシッと一定間隔で軋み、カーテンもそれに合わせて微かに揺れています。彼女さんが上に乗っているのでしょう。彼女さんが彼の上で跳ねる影がカーテン越しに薄っすらと透けて見えます。軋み音の間隔が徐々に短くなります。
『ん、んぅっ、、』
「ぁっ、、ぁぁ、、」
『ぅ、、うぅっ、、』
その小さな喘ぎ声とともにベッドの軋む音は止み、静かになりました。と、同時に僕もティッシュの中にたっぷりと果てたのです。僕は汚れたティッシュを包むと、わざと今さっき目が覚めたと言わんばかりに大げさなあくびをしてみせました。すると隣から『セーフ...』という小声が聞こえてきましたが、、全然セーフではないぞ、若造。
この一件の後も、このカップルには何度かお世話になりました。風の噂では屋上に続く階段やや多目的トイレなんかでもヤリまくってたようです。
これこそ若気の至りというやつですね。
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