【8】
大量の精液が、幸子のパンティーから溢れ出してきた。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
やっぱり、幸子が犯される妄想はたまらない。
射精の瞬間の快感は、立ち眩みがするほど頭が真っ白になる。
だが、冷静になると僕はいつも罪悪感と後悔で自己嫌悪になっていた。
興奮している時は、自分を止める事が出来ずに行き過ぎた行動に出てしまうが、やはり普通に考えて親友の母親が犯されるのを妄想して興奮するなんてどうかしている。
万が一、実際に幸子が犯されたとしたら僕は絶対に助ける。
あくまでも自分の妄想の中でだけだ、本当に幸子が犯されたとしても興奮するはずがないんだ。
僕は自分の行為をこうして正当化し、いつも自分にそう言い聞かせた。
そのはずだった、少なくともこの時はまだ・・・。
僕は、幸子のパンティーから精液を拭き取ると収納していた元の位置へ戻した。
そして、僕はなに食わぬ顔で晶の部屋へ戻った。
30分ほど経つと、幸子も帰ってきた。
帰ってくるなり、夕飯を作っている様だ。
その後も、僕はずっと晶の部屋にいた。
気付くと6時、空も陽が落ちようとしていた。
「そろそろ帰るよ。」
夕飯の時間にもなり、僕は帰る事にした。
幸子は台所にいて、由英は先程戻ってきたらしくどうやら風呂に入っている様だ。
「お邪魔しました。」
今夜も幸子が犯される妄想で扱くか、僕はそんな事を思いながら外に出た。
すると、家の敷地から道路に出た時だった。
「洋太、待って!」
後ろから僕を呼び止めたのは、幸子だ。
僕は、無意識に身構えた。
もしかしたら、下着の事がバレたのかもしれないと思ったからだ。
しかし、そうではない事はすぐに分かった。
幸子は、手にビニール袋を持っていた。
「これ、今日特売品だったのよ。
洋太好きでしょ、夕飯に食べて。」
ビニール袋に入っていたのは、鰻の蒲焼きだった。
確かに鰻の蒲焼きは好きだったが、こんな事をされると益々罪悪感に苛まれてしまう。
「うっ、うん。どうも。」
何だか幸子に申し訳無くなり、僕は足早に立ち去ろうとした。
だが、そんな時だった。
「おや、牧元さんの奥さんじゃないですか。」
1人の男が、幸子に話し掛けてきたのだ。
その人物に気付いた瞬間、幸子の表情が険しくなった事を僕は見逃さなかった。
この男の名は、伊藤文男(いとうふみお)。
独身、年齢は50歳前後で由英とあまり変わらないはずだ。
しかし、杖をついている事もあってか見た目は由英より老けて見える。
体型も肥満体で無精髭が下品に生え、汚ならしいジャージ姿からも不潔感が漂ってくる。
幸子の家の斜め向かい、そこに伊藤の家はあった。
周辺は、田舎ではあるが住宅が建ち並んでいた。
ところが、幸子と伊藤の家の隣には近所の住人が所有する畑で囲まれていて、2軒だけが取り残された様に建っていた。
つまり、1番近くの隣人というわけだ。
仕事は、どうやらしていないらしい。
以前、事故が原因で片足が不自由になったのだとか。
杖をついているのは、そういう事なのだろう。
その為、生活保護を受給して生活しているらしい。
それから、伊藤はそもそもこの町の人間ではなかった。
元は違う土地に住んでいたが、そこで事故に遭った様だ。
働く事が困難になり生活保護を受ける様になったのが3年程前、伊藤がここへ引っ越してきたのはその時期だ。
何故この町へ来たのかというと、物価が安く空き家が破格の値段で売られていたからだという話だ。
実際、伊藤が住んでいる家は数年前から空き家だった。
元々は老夫婦が住んでいたのだが、妻が亡くなったと同時に夫は介護施設へ入居。
その時に、売り払ったらしい。
1階建てで狭く、外観もあまり誉められたものでは無いが独身の1人暮らしとしては十分な物件だろう。
しかし、これらの情報は本人から得たものでは無い為に正確なのかは分からなかった。
何故なら、この男とは誰も関わりたくないからだ。
見た目の不潔さ、更に不気味な雰囲気がこの男にはあった。
子供はもちろん、大人であっても近隣住人達は近寄ろうともしなかった。
この男の経歴は、噂好きなおばさん連中が何処からか聞きつけてきたらしい。
だが、生活保護を受給しているというのは本当だそうだ。
役所の人間が言っていたらしいので、嘘ではないのだろう。
もっとも、足が不自由なはずなのに普通に歩いていたという噂もあるが・・・。
僕が知っているこの男の情報は、こんなものだ。
でも、これは僕だけなのかもしれないが、この男からはあるものを強く感じていた。
「いや~、奇遇ですねぇ。
ちょうど散歩に行こうと思ってたんですよ。」
「・・・」
幸子の反応は、素っ気ない。
伊藤は、僕の存在にも気付いた。
「ん?見た事ある顔だな。」
幸子が、仕方無さそうに答えた。
「・・・息子の友達です。」
「・・・あぁ、そうだ。
よく牧元さんの家に出入りしてるなぁ。」
何だか、僕に対する視線は冷たい。
伊藤は僕を無視する様に、再び幸子に話し掛けた。
「しかし、奥さんはいつ見てもお元気ですねぇ。」
「・・・そんな事ありませんけど。」
「いやいや・・・その身体を見れば分かりますよ。」
幸子は、ムッとした表情を見せた。
健康でよく食べているから豊満な体型をしている、そんなニュアンスに捉えたのだろう。
「おや、何か気に障る事を言ったかな?」
伊藤は、下品な笑いを見せた。
すると、伊藤は僕が持っているビニール袋に気付いた。
「ところで、いい匂いがしてるそれは何かな?」
伊藤は、遠慮無しに袋の中を覗き込んだ。
「あぁ。なるほど、鰻か。
・・・という事は牧元さんのお宅の夕飯も?」
「・・・えぇ。」
「鰻の蒲焼きなんて久しぶりに見たなぁ。
何せ独り身なんでねぇ。
・・・お裾分けしてくれる人がいてくれたら助かるんですがねぇ。」
そう言って、伊藤は幸子に目配せした。
まるでせがんでいるかの様な物言いに、幸子は更に嫌悪感を表した。
「いや、申し訳無い。
悪気は無いので気にせんで下さい。
でも鰻とは・・・やはり奥さんは活発な方なんですなぁ。」
「えっ?」
「だって、ご主人にも鰻を食べさせるんでしょう?
つまり今夜は激しい夜を過ごす、と。」
「なっ!?」
確かに、鰻は精力増強の効果があるといわれている。
しかし、もちろん幸子はそんなつもりで買ってきたわけではないだろう。
案の定、幸子はその発言に我慢出来なかった。
「何を言ってるのあなたは!?
どうかしてるわ!!」
そう言うと、幸子は家の中へと戻っていった。
僕に何も言わずに行ってしまうという事は、よっぽど怒っていたのだろう。
だが、伊藤は全く悪びれる様子もなく呟いた。
その言葉で、僕は確信したのだ。
「ふん、相変わらず生意気な女だ。
・・・その身体もな。」
伊藤は、家の中へと入る幸子を眺めながら言った。
その視線は、間違いなく淫らなものだった。
そう、この伊藤こそ幸子に卑猥な欲望を持っている可能性がある男だったのだ。
そして、先程僕の妄想で幸子を犯した相手が、この男だ。
幸子に良からぬ視線を送っている、それに感付いたのは伊藤が引っ越してきてすぐだった。
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