【58】
「・・・じゃあ、全部観たって事だよね?」
僕は、恐る恐る聞いた。
「・・・本当に驚いたよ。
思った通り、いや、それ以上のものが観れたんだからな。」
杉浦は、より一層淫醜まみれの表情で笑った。
「あんな奴が幸子を犯すなんて許せねぇけど・・・やっぱ、幸子は最高の女だって思い知ったよ。
あっ、これは返すけどちゃんとコピーしといたからな。
もちろん、誰にも言わねぇよ。
あんな映像、他の奴が観たら黙ってねぇだろ?
これ以上、幸子を他の奴等に犯らせるわけにはいかねぇからな。」
幸子を想っての言葉ではない、それだけは確かだ。
「・・・でも、まさかお前まで幸子の事を・・・人は見掛けによらないって本当だな。
・・・お前も犯ったのか?」
その瞬間、杉浦の顔が豹変した。
恐らく、自分より先に幸子を味わったと勘違いして僕に対する妬みや怒りから現れたものだろう。
しかし、僕はすぐに否定した。
幸子の事は、あくまで妄想の中だけ。
現実で、幸子と淫らな行為をしたいとは思わない。
そして、思わず幸子の下着を盗んでしまったところを伊藤に目撃されてしまい、弱みを握られた僕は仕方なく一部始終を隠し撮りする事になってしまった。
ディスクの映像はその時のもので、伊藤が今後も僕を利用するための餌として渡した。
僕と伊藤の関係性、僕の幸子に対する淫欲度、杉浦に全て話した。
もちろん、杉浦の厄介な人間性を警戒したからだ。
素直に話し、全ては伊藤が仕組んだ事で僕は逆らえなかっただけ、僕は幸子に手出しする気はない。
杉浦には、そう思わせる必要があった。
そうでなければ、晶や幸子などに僕の行為を知らせる可能性もある。
杉浦も、敵に回してはいけない人物なのだ。
「・・・へぇ、じゃあお前は伊藤に逆らえないから協力するしかないって事か。」
「うっ、うん。」
どうやら、僕に対しての敵対心は無くなった様だ。
だが杉浦はそれ以上語らず、しばらく何かを考え込んでいた。
この状況を打開するためのものではないだろう、杉浦に限ってそれだけはあり得ない。
すると、ようやく妙案が閃いたのか杉浦が口を開いた。
「よしっ、分かった。
・・・洋太、お前を助けてやる。」
「・・・えっ?」
意外な言葉に、僕は驚かずにはいられなかった。
「俺が、伊藤と話をつけてやるって事だ・・・。」
杉浦は、解決策の全貌を語り始めた。
それは、逆に伊藤を脅迫するという内容だった。
偶然、幸子を犯した映像を杉浦が発見し、事情を知ってしまった。
そして、伊藤の卑劣な行為を許せない杉浦が脅迫する。
こんな事実が外に出回って困るのは、幸子だけでなく伊藤自身もだ。
今後も幸子を弄ぶつもりなら、警察に証拠映像を持っていく。
更に僕にもこれ以上関わらない事、という内容だった。
「親友と親友の母親に、なめたマネをした罰だ。
俺が、鉄槌を下してやる。」
杉浦らしからぬ発言だが、今はそれに頼るしかなさそうだ。
しかし、新たな不安が僕の中に生まれた。
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