【55】
「どうした、顔色が悪いぞ。これを探してたんだろ?」
杉浦はディスクを取り出し、僕に見せつける様に目の前でちらつかせている。
もう、ディスクの内容は把握済みだろう。
僕は、諦めて杉浦に問いかけた。
「・・・どこまで・・・一体、どこまで知ってるの?」
「どこって・・・それが聞きたいのはこっちなんだけどな。
まさか、あんなものが観れるとは思わなかったぜ。」
今の発言で、杉浦が把握しているのはディスクの映像だけだというのが分かった。
撮影者が僕だという事も、恐らく気付いているだろう。
とりあえずディスクの所在が判明したからか、僕は少しだけ冷静さを取り戻した。
そして、1つずつ謎に包まれたパズルを完成させる事にした。
「・・・何で、ディスクを盗んだの?」
「それより、先に聞きたい事があるんじゃねーか?もう分かってんだろ。
・・・そう、お前等と一緒だ。俺もさぁ、前から幸子が好きだったんだよ。」
杉浦は、あっさりと核心を語った。
しかし、やはり僕の予想は間違っていなかった。
この男も、幸子を狙う醜い淫獣だったのだ。
どことなく漂う淫臭、それが幸子に向けられている事には最初から気付いていた。
幸子が杉浦を執拗に拒んでいる、杉浦が晶にしつこく言いくるめて幸子の家を訪ねようとしている、それだけで僕には理解できた。
杉浦は同級生の母親である幸子に淫らな欲望を抱いている、それも淫醜に満ちた危険な感情。
更に幸子にも淫獣の臭いは伝わり、息子と同い年ではあるが伊藤と同じく警戒するべき存在と察知。
この約5年間、幸子と杉浦はそんな関係性だったのだ。
杉浦は、これまでの幸子との経緯を自ら語り始めた。
幸子に初めて会ったのは、引っ越してきて間もなく晶の家に遊びに行った時。
この時は、僕も居たので覚えている。
家に入るなり、居間で掃除をしている幸子の姿を発見。
「・・・幸子を見た瞬間、体中の血液が沸騰したかと思ったよ。
初めての感覚だったけど、すぐに分かった。
他の女とは違う、本能がこの女を求めてるんだってな。
それに、何といってもあの身体だよ。
思春期にあんなエロい身体、刺激が強すぎるだろ?
気が強そうな顔もメチャメチャ興奮したなぁ。
・・・うちのババァが何処でもいいから引っ越すって言った時は、ふざけんなって思ったけど・・・まぁ、実際こんな田舎だったから俺の人生は終わったって諦めたよ。
でも、それは間違いだった。
こんな田舎に、すげぇ女が居たんだからな。」
以前、伊藤が言っていた事と同じ様な言葉を語っている。
確かにどちらも他所から引っ越してきた者同士だから、そう思うのも当然だろう。
こんな田舎に、幸子の様な類い稀な美貌と豊満な肉付きを誇る女が存在しているなんて誰も思わない。
更に、幸子との衝撃的な出会いを語り足りないのか、杉浦は続けた。
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