【50】
初めて会った時からどこか不気味で、関わり合うのを躊躇してしまう雰囲気があったのだ。
だからといって大人しい性格かといえばそうではなく、高圧的というか横柄な態度が目立っていた。
そう、伊藤とどこか似ているのだ。
それは、性格だけではなかった。
見た目も、不気味な雰囲気を醸し出していたのだ。
10代にしては大人びているというか、既に老熟したような外見は若さを全く感じさせなかった。
更に体型も伊藤と同じような肥満体、中年男性と間違われても仕方がないだろう。
当然そんな見た目や雰囲気だから、校内の女子には避けられていた。
伊藤に似た雰囲気は、女子からすれば相当不気味なものに違いない。
伊藤というずば抜けて怪しい存在がいるから目立たないが、杉浦にもそれに近いものがあったのだ。
正直、僕や晶、周りの友人もあまり関わりたくはなかった。
だが、それは出来なかった。
伊藤同様、この男の怒りを買うと面倒なことになるからだ。
執拗に追いかけ回したり、いつまでも因縁をつけたりすると専らの噂だった。
だから友人とは言いつつも、杉浦を好む者はいないのだ。
晶ともそんな話をよくしているが、杉浦の機嫌を損ねれば厄介な事になるからと僕たちは極力仲間に加えていた。
しかし、実は僕達以上に杉浦を嫌う人物がいたのだ。
僕達や校内の女子達よりも杉浦を避ける者とは、幸子だった。
杉浦親子が引っ越してきた当初から、幸子は距離を置いていた。
そしてそれは母親の方にではなく、息子へ向けられていたのだ。
引っ越してきて間もなく、杉浦が幸子の家に遊びに来たことがあった。
当時はまだ杉浦をあまりよく知らなかった事もあり、僕達は友好的に接しようと気遣っていたのだ。
ところが、そこで杉浦の人間性を知る事となった。
不躾な態度や図々しい発言等、僕達はとんでもない厄介者が現れたと呆れたものだ。
でも、僕達以上に杉浦に憤怒していたのが幸子だった。
晶から聞いた話では、もう杉浦を家に呼ぶなと相当激昂していたらしい。
幸子と杉浦の間に何があったのかは分からないが、途中で杉浦が帰ったのは覚えている。
晶がそこまでしなくてもと宥めたらしいが、幸子は聞き入れなかった様だ。
杉浦にも、何があったのかは聞いていない。
晶はどうせ失礼の事でも言ったのだろうと思っていた様だが、僕は理由を聞くのが怖かったのでやめた。
余程、幸子にとって怒りを抑えきれないことがあったのだろう。
きっと、それは僕が想像している事に違いない。
それ以降、杉浦は幸子の家を出禁になった。
杉浦が何度も遊びに行きたいと晶に尋ねても、何とか誤魔化して拒んだ。
僕が幸子の家に行く時は、杉浦に内緒にしていた。
その為、実は町内運動会の時も幸子の家に行く年は杉浦を呼んでいなかった。
適当な嘘をつき、杉浦をかわしてきたのだ。
とはいえ、さすがに僕の家に来る時は拒むことはしなかった。
やはり、杉浦の機嫌を損ねない為だ。
杉浦に敵視されない様に僕達は約5年、忖度してきた。
その後、伊藤文男という淫獣が現れた為に目立たなくなったが、杉浦も何ら遜色はない存在だ。
杉浦朋義とは、そんな男なのだ・・・。
※元投稿はこちら >>