【49】
正直、半信半疑だったし喜ぶのも不謹慎だと思い、考えない様にしていた。
数週間も経ち、少しずつ記憶の中からも消えようとしていた。
そんな、半ば諦めていた矢先の伊藤からの報酬だった。
「欲しいだろ?ほら、持ってけよ。」
もちろん、これは主と奴隷の関係を継続させるための餌であることは間違いない。
受け取るのを断れば、少しは関係性にも変化が生まれるかもしれない。
だが、僕には断ることが出来なかった。
本当にあの刺激的な光景がまた見れる、やはり僕には無視する事など出来ないのだ。
この先、伊藤に従い続けなければいけないとしても、あの映像はそれ以上の価値があるのだ。
幸子を心配しておきながら、結局僕は伊藤と変わらない淫獣なのかもしれない・・・。
僕は、伊藤からディスクケースを受け取った。
「今日は徹夜だな。
まぁ楽しんでくれ、相棒。」
伊藤の見下した言葉など構わず、僕は家を出た。
早く、家に帰ろう。
今の僕の頭の中には、このディスクの中身を1秒でも早く確認する事だけだ。
僕の肉棒も、待ちきれずにムクムクと疼いていた。
しかし、こんな時に限って思い通りにはいかないものだ。
そんな僕の淫欲を阻む存在が、現れたのだ。
「あれ、洋太じゃないか?」
敷地内から道路に出た瞬間、後ろから声を掛けられて僕は驚いた。
男の声だというのは、すぐに分かった。
でも、晶と由英の声ではない。
聞き覚えはある声なのだが・・・。
僕は、躊躇いながらも後ろを振り返った。
「・・・あっ!」
そこにいた人物とは、面識があった。
むしろ、ほぼ毎日顔を合わせている程の間柄だ。
同じ高校に通う同級生、そして同じ地区に住んでいる友人の杉浦朋義(すぎうらともよし)。
幸子が犯された日に晶と遊びに行く予定だったのが、この男の家だったのだ。
同級生でこの地区に住んでいるのが僕と晶、そしてこの杉浦だ。
学校内にも他に友人はいるが、同じ地区に住んでいることもあって僕達3人で遊ぶことが結構ある。
とはいっても、幼少期からの幼なじみというわけではない。
杉浦は中学生になって間もない約5年前、他県からこの町に引っ越してきたのだ。
その理由は、両親の離婚らしい。
もともと、普段から喧嘩が絶えなかった為に、離婚して母親に引き取られたのだそうだ。
この田舎にわざわざ引っ越してきたのには、特に理由は無いらしい。
とりあえず、前夫から離れた土地であれば何処でも良かったのだとか。
このエピソードの通り、母親がいい加減な性格だというのは僕も最初から薄々勘付いていた。
この辺りの母親達とは少し違い、子供にもあまり関心が無く、良く言えば放任主義というのだろう。
その為、家でもほとんど会話も無い様だ。
離婚したのも、頷ける。
そんな性格だから僕の母親や幸子はもちろん、近所の母親達からもあまり好まれないタイプなのだ。
当然、町の運動会にも何の理由も告げずに毎年不参加だ。
杉浦も不憫な家庭で育ってしまった、普通なら同情してしまうに違いない。
ところが、そうはならなかった。
何故なら、息子の朋義はそれ以上に厄介な存在だったのだ。
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