【48】
幸子は、明らかに精神的に衰弱している。
このままでは、いくら幸子でも精神がもたない可能性もある。
もう少し、幸子に自由な時間を与えた方がいい。
僕は、伊藤に歯向かう様に言った。
これが、今の僕に出来る最大限の抵抗だった。
もちろん、伊藤が素直に聞き入れるはずがない。
ようやく待ち望んだ淫願が叶ったのだから、それも当然だろう。
本来なら、昼夜問わず幸子を犯し続けたいに違いない。
実は、僕は既に伊藤に忠告していた。
幸子が気丈な性格をしているといっても、日常生活に支障をきたす程犯し続けていれば家族に不信感が生まれるかもしれない。
もしも気付かれてしまえば、全てを失ってしまう。
もう幸子を弄ぶことも、不可能になる。
そうならないために、できるだけ幸子には家族と一緒にいる時間だけは手を出さない方がいい。
僕のこの提案に、伊藤も最初は聞く耳をもたなかった。
しかし、僕の説得に嫌々納得せざるを得なかった。
この先も幸子を好き放題犯せると思えば、僕の提案を聞き入れるのが妥当だと判断したのだ。
それで祝日や土日の休日、平日でも家族が家にいる夜、その時間帯だけは幸子を自由にさせるという暗黙のルールが決まった。
以降、伊藤は家族が家にいる間は幸子に手を出していないようだ。
だが、今日久しぶりに幸子に会ってみてそれだけでは足りないという事が分かった。
伊藤もこれ以上譲るつもりは無い様だが、僕は決定的な事を言い放った。
このままでは幸子も思い詰めてしまい、最悪のケースも考えられる。
幸子にもしもの事があれば、元も子もない。
せめて平日とはいえ、毎日ではなく間隔を開けるなりの配慮をした方がいい。
僕のこの発言に、さすがに伊藤も事の重大さに気付いた様だ。
伊藤自身、幸子が以前の様な勝ち気な表情が失われている事に気付いていたらしい。
それでも幸子を手放したくない淫欲が勝り、犯し続けていたのだろう。
でも、それで幸子を失ってしまえば本末転倒だ。
伊藤は、苦虫を噛み潰したような表情で受け入れた。
これで、少しは幸子の負担も軽くなるだろう。
とはいえ、こんな事で罪を償ったと思うわけにもいかないが・・・。
とりあえず、自分の言いたいことは言えたし伊藤も納得した様だ。
僕は、帰ろうと居間を出ようとした。
すると、伊藤が呼び止めた。
「おっ、もう帰るのか?
それじゃあ、これはいらないんだな。」
「えっ?」
僕は、伊藤を見た。
その伊藤の手には、ディスクケースが1枚。
ディスクも入っている様だ。
しかし、それが何なのか僕には理解出来なかった。
今まで、伊藤が僕に贈り物をする等なかったからだ。
むしろ、僕から何もかも奪っていった様なものだ。
そんな伊藤が、いきなり渡そうとしたものとは・・・。
「・・・あっ!」
僕は、数週間前の出来事を思い出した。
伊藤が、幸子を犯した日だ。
あの後、僕はここへ来て伊藤にビデオカメラを渡した。
その時、伊藤から言われた言葉を思い出したのだ。
共犯者の僕に、報酬として幸子が犯された映像をコピーして僕に渡す。
つまり、伊藤が手に持っているのはそれというわけだ。
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