【47】
土曜日の正午、約1ヶ月ぶりの幸子の家だ。
その間、斜向かいの伊藤の家には何度か夜に訪れていたが、幸子の姿を確認する気にはなれなかった。
「・・・お邪魔します。」
僕は、すぐに晶の部屋へ向かおうとした。
やはり、幸子と対面するのを避けたかったからだ。
しかし、居間のスライドドアが開くと最も会いたくない人物が現れた。
もちろん、幸子だ。
「洋太、久しぶりじゃない。
最近、遊びに来ないから心配してたのよ。」
いつもと変わらない優しい言葉は、僕の胸を締め付けるには十分過ぎた。
「うっ、うん。ちょっと、用事があったから・・・。」
僕は、それ以上一緒にいる事に耐えられず晶の部屋に向かった。
口調は、普段の幸子と変わらない。
だが一瞬だけ見てしまった表情は、やはり違っていた。
体型が変わったわけではない、いつ見ても極上の肉付きだ。
でも、僕には分かった。
明らかに、疲労感が漂っている。
やつれたというのは違うかもしれないが、いつもの気の強そうな幸子の表情ではない。
伊藤の繰り返される淫攻に、疲弊しているのだ。
このままではいけない、絶対に・・・。
晶の部屋でいつも通り遊んでいると、夕飯の時間があっという間に訪れた。
いつも美味しい幸子の料理だが、今日は味わう余裕がなかった。
台所での食事、どうしてもあの日の淫劇を思い出してしまうからだ。
激しく犯された幸子の姿が、何度も頭の中を駆け巡り食事どころではない。
とはいうものの、僕の肉棒は硬くなっていた。
目の前では、あれだけ犯された幸子が普段通りを装って生活しているのだ。
いけない事だと自分に言い聞かせても、この状況では興奮を抑えきれない。
僕は、早く食べ終えて晶の部屋に移動した。
それから1時間程経ち、僕はそそくさと帰ろうとした。
いつもならまだ遊んでいる時間だが、今日は駄目だ。
幸子と顔を合わせるのは、やはり辛い。
早く帰りたい、こんな事を思ったのは初めてだった。
「お邪魔しました。」
僕は、素早く幸子の家を出た。
しかし、早く帰ったのには別の理由もあったのだ。
夜の7時、空は既に暗闇に包まれている。
牧元家の敷地から道路に出て、僕はある場所へ向かった。
目の前にある淫獣の棲み家、伊藤の家だ。
実は、伊藤から呼び出されていたのだ。
どんな話なのかは、分からない。
だが、僕も伊藤に言いたい事があったから好都合だ。
僕は、伊藤の家に入っていった。
居間に行くと、いつもの様に大きな態度でふんぞり返った伊藤がいた。
「どうだ、久しぶりに愛しの親友の母親に会った気分は?」
伊藤は、小馬鹿にした様に僕に言った。
僕が幸子の家に行く事は、事前に知らせていたのだ。
未だに、僕は幸子に関する情報を伊藤に伝えなければいけなかった。
弱味を握られた僕には、拒否権など無い。
ただ、奴隷の様に従うだけだ。
でも、奴隷にも立ち向かわなければいけない時もある。
幸子の為に、僕は伊藤に反旗を翻した。
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