【24】
「いやぁ、しかしここに引っ越してきた時はどうなる事かと思いましたよ。
私、足が不自由でしょ?
こんな田舎じゃ交通の便も悪いし、娯楽も何も無い。」
幸子が全く関心を持たなくても、伊藤は続けた。
「でも、違った。
だって、こんな優しい奥さんが近所に住んでたんだから。」
「・・・ありがとうございます。」
幸子は、仕方なく返した。
「いやいや、奥さんには感謝してます。
・・・本当に、毎日お世話になってますよ。」
幸子が目を合わせないのをいい事に、伊藤は幸子を舐め回す様に視姦した。
幸子の顔、濃紺のスーツと白いYシャツの上からでも確認出来る豊乳の膨らみ。
こんな密室空間で、目の前にいる幸子を堂々と視姦するのは初めてだろう。
伊藤の、幸子を視姦する目付きが一際鋭くなった。
すると伊藤は僕に目配せし、再び合図を送った。
僕は、すぐ携帯電話を取り出すと伊藤の指示通り従った。
そして、これが幸子にとって状況を悪化させる事態となる。
その最悪の状況は、すぐに訪れた。
遠くから、廊下を歩く足音が近付いてきた。
「あっ、母さんここにいたん・・・あれ、どうも。」
現れたのは、晶だ。
伊藤が来ていた事を今知った様だが、晶は不思議そうに見ている。
というのも、近所に住んでいても伊藤とは交流が無いからだろう。
以前、晶が伊藤の人間性の不満を洩らしていた事があった。
そんな人物が、家に上がり込んでいるのを疑問に思うのも当然だ。
晶が仕方なく挨拶をすると、伊藤も言葉を掛けた。
「こんにちは。お邪魔してるよ。
・・・ちょっとお母さんに落とし物を届けてあげたから、1杯ご馳走になってるんだ。」
「落とし物?」
幸子は、伊藤を睨み付けた。
幸子にしてみれば、その落とし物が自分の母親の下着、それも精液まみれのものだと息子には知られたくないだろう。
幸子は、話を逸らす様に晶に訊ねた。
「そっ、それよりどうしたの?
何か話があったんじゃない?」
「あぁ、そうだ。
俺、もう行くから。」
「えっ!?でも、まだ早いんじゃない!?」
幸子は、晶がいなくなる事で伊藤と2人きりになるのを危惧している様だ。
「洋太が、もう待ち合わせ場所で待ってるみたいなんだ。
早く来いって急かしてるから行くよ。じゃあ。」
「あっ、ちょっと、待ちなさ・・・。」
晶は、幸子の制止を無視して家を出て行ってしまった。
これは、僕が伊藤の指示で行ったものだ。
事前に用意していたメールを、晶に送信したのだ。
案の定、まんまと晶を家から追い出す事に成功し、幸子は伊藤と2人きりになってしまった。
幸子の心情を考えると、本当に僕は最低な事をしたと思う。
だが、もう手遅れだ。
僕は、ただこの運命を見守る事しか出来ない。
「息子さん、急用じゃあ仕方ないですなぁ。
・・・しかし、本当に大変な事になりましたねぇ。」
「・・・何がです?」
幸子は、苛立ちを隠せないでいる。
この状況なら、当然だろう。
しかし幸子と2人きりになった伊藤を止める事は、もう誰にも出来ないのだ。
「いや、奥さんの下着の件ですよ。
あんな状態になるまで行為に及んでいたって事は、相当奥さんに入れ込んでる証拠。
誰か心当たりがある人物は居ませんか?
奥さんをいやらしい目で見ている下着泥棒は。」
伊藤は僕に目をやり、再びほくそ笑んだ。
弱味を握ると徹底的に侮辱する、伊藤の低俗さが表れている。
だが、これがまた僕への合図だった。
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