【155】
異変に気付いたのは、直後の事だ。
「ちょっ・・・!!」
今の声は、間違いなく幸子だった。
だが、それ以外は何も聞こえない。
客間の様子が気になって仕方無いが、僕は背中を向けている。
もしも、振り返って確認した時に僕が予想していた光景だったら、取り返しのつかない事態だ。
見られてしまった幸子は、絶望的な心境に陥るだろう。
僕も、これから幸子と普通に接する事は難しい。
今後、幸子が僕を避ける可能性だってある。
それだけは、阻止しなければいけないのだ。
とはいえ、悠長に食事をしている状況でもない。
何とかして、客間の様子を確認出来ないものか。
すると、僕は1つだけ方法を思い付いた。
ズボンのポケットに手を突っ込み、取り出したのは携帯電話だ。
まず、その携帯電話をカメラモードにする。
更に、自分の脇を僅かに開いた。
つまり、フロントカメラに設定して脇の間から盗み見ようというわけだ。
これなら、上手く誤魔化せるはず。
慎重に携帯電話の位置を調整し、丁度いい角度を見つけると僕は画面を凝視した。
客間の状況は、よく確認出来そうだ。
しかし、肝心の2人の姿は何処にも無かった。
見えるのは中央のテーブルと、その付近に落ちている新聞だけだ。
新聞があるという事は、幸子が客間を踏み入れたのは間違いない。
一体、何処に消えたのだろう。
幸子の声は、ただ事では無かった。
少し卑猥な言葉を掛けられた位で、あんな声は出ない。
もっと、端の方まで細かく探そう。
足音は聞こえなかったので、客間から出たとも考えにくい。
居るとしたら、この携帯電話の画面に写っているはずなのだ。
そして、僕はようやく2人の居場所を発見した。
いや、正確にはある部分だけがはみ出ているというべきだろう。
そこは、携帯電話の画面の端だった。
普段、客間と居間を仕切る襖は閉じている。
だが、昨晩の宴会もあって襖は左右に開いていた。
その襖から、僅かに身体の一部が見切れていたのだ。
生地はジーンズで、ボリューム感のある丸みを帯びた曲線。
間違いなく、幸子の肉尻だ。
それに、足も少しだけ見えている。
幸子がどんな体勢なのか、その部分だけでも予想出来た。
両膝を着いて、前傾姿勢で踏ん張っているのだろう。
そんな体勢を強いられている理由は、1つしかない。
しかも、僕が確信する淫音まで漏れてきたのだ。
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