【152】
やはり、幸子は精液に気付いて別の下着に穿き替えたらしい。
正直そのまま穿いてくれればとも思ったが、どうやら幸子の反応だと僕を疑ってはいない様だから一安心というべきだろう。
だとすれば、そろそろ戻った方がいい。
たかがトイレに行っただけなのに、時間が掛かりすぎては変に勘繰られてしまう。
朝食を食べている間に由英が起きたら、すぐに帰る。
それが、幸子となるべく顔を合わせたくない僕が出来る最善の策だ。
洗面所を出て台所に戻ると、既にテーブルには朝食が並んでいた。
目玉焼き、ウィンナー、サラダ、味噌汁など色合いもよく考えている。
当然、味付けも抜群なのは言うまでもない。
「まだあるから、遠慮しないでおかわりするのよ。」
「うっ、うん。・・・いただきます。」
僕が座ったのは、客間に背を向けた席だった。
何故なら、幼少期から牧元家で食事をする時はいつもこの席だったからだ。
「あっ、そういえばお家には泊まらせるって昨日連絡したから。」
「あっ、ありがとう。」
「でも、まさかお酒を飲んじゃうとは思わなかったわ。
洋太も、いつの間にかそんな歳になるのね。
だからって、まだ未成年なんだから来年までは我慢するのよ。」
「うっ、うん。」
幸子にしてみれば、僕は相変わらず息子同然の様だ。
息子の晶が離れて暮らしているので、尚更僕におせっかいを焼きたいらしい。
再び、強い罪悪感が襲ってくる。
昨晩だって、幸子を助ける機会は幾らでもあった。
だが、犯される幸子が見たくて僕はただ傍観していたのだ。
助ければ杉浦に今までの事を幸子に暴露されるという恐怖もあったが、それ以上に幸子が犯される姿を視姦したかったのである。
情けない自分から逃れる様に、僕は朝食を口に掻き込んだ。
幸子は、優しく笑いながらシンクに向かった。
昼食、或いは夕食の準備だろうか。
何やら、料理の下ごしらえをしている様だ。
料理好きという事もあるだろうが、由英に美味しい料理を食べさせたいのかもしれない。
すると、その想いに呼応したのか幸子が待ち望む人物が台所に現れたのだ。
「おはよう。
あれっ、やっぱり洋太はうちに泊まったのか。」
あくびをしながら話し掛けてきたのは、由英だった。
「あなた、おはよう。
朝食用意してるけど、どうする?」
由英の声にすぐ反応し、安堵の表情を浮かべる幸子。
「ん~、味噌汁だけもらおうかな。
何か、まだ頭がボーッとするんだ。
昨日、そんなに深酒してたか?」
「えっ、えぇ。
だいぶ、飲み過ぎたみたいよ。」
多量の睡眠薬を、飲まされた影響かもしれない。
もちろん、幸子に真実を打ち明ける気は無いだろう。
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