【151】
幸子と、目が合ってしまった。
こちらを、警戒している様に見える。
もしかしたら野田と勘違いしたのかもしれないが、僕はいきなりの事で挙動不審になってしまった。
冷静になろうとしても、動揺を隠しきれない。
このままでは疑われると、最悪の事態も覚悟した。
だがその瞬間、幸子の険しい表情が穏やかなものへと変わったのだ。
それは、幸子がいつも僕に見せる優しい親友の母親の顔だった。
「おはよう、洋太。
朝食作ったけど、食べるわよね?
今準備するから、こっちに来て食べなさい。」
「うっ、うん。」
幸子の口調は普段通りだが、やはり疲弊しているのは表情で分かる。
あんな酷い目に遭っては、一睡も出来なかっただろう。
とはいえ、扇情的な姿は相変わらずだ。
僕は立ち上がり、台所へと向かった。
「さぁ、ここに座って。」
台所のテーブルへ誘導する幸子。
ついさっきまで犯されていたのに、気丈に振る舞っている。
そう思うと、どうしても幸子を直視できなかった。
「・・・さっ、先にトイレに行ってくる・・・。」
いざ幸子と2人きりの空間になると、耐えられそうにない。
とりあえず、気持ちを落ち着ける為にトイレに逃げるのは正解だろう。
トイレがある洗面所に入り、僕は深呼吸した。
何食わぬ顔で、やり過ごそう。
数分間、瞑想の様な時間が流れた。
(大丈夫、幸子は只の親友の母親だ。)
そう自分に言い聞かせ、洗面所を出ようとした。
しかし、その前に僕の鼻は特異な香りを嗅ぎ取った。
これは、石鹸の香りだ。
洗面所内に、石鹸の香りが充満しているではないか。
恐らく、幸子が身体中にこびりついた汚濁液を洗い流す際に浴室で使用した石鹸類だろう。
これだけ香りが残っているという事は、思った通り幸子は解放されてからまだ時間が経っていない様だ。
更に、僕は連鎖的にあるものを思い出した。
本能のまま、洗面所内を歩いて進む。
そして、到着するなり躊躇なく蓋を開けた。
僕が立ち止まったのは、洗濯機の前だ。
目当ては、幸子の下着である。
幸子が下着を穿き替えているなら、洗濯機に入れるはずと読んだのだ。
もちろん、予想的中だった。
シルク生地の白いブラジャーと、白のコットン生地で濃紺の花柄模様が彩られたパンティー。
僕が、精液をぶちまけた幸子の下着だ。
※元投稿はこちら >>