【17】
写真の大半が、庭にいる幸子だった。
写真の角度から察するに、多分この家の居間の窓から撮っていた様だ。
偶然カメラ目線になった写真もあるが、間違いなく隠し撮りだ。
全身を撮った写真がほとんどだが、豊乳や肉尻に拡大した写真も何枚もある。
言わずもがな、いつ見ても見事な肉付きだ。
これで興奮するなというのは、不可能だろう。
とはいえ、これだけの写真を隠し撮りしていたのには驚いた。
伊藤の幸子に対する淫欲は、僕以上だ。
写真は通常サイズの物もあれば、パソコンで印刷した大きなサイズの物もあった。
その中には、たまたま幸子がカメラ目線になった写真も含まれていた。
丁度、幸子が目を閉じて眉間に皺を寄せた瞬間の写真だ。
だが、その写真の異変に僕はすぐ気付いた。
幸子の顔に、大きなシミがあったのだ。
恐らく、伊藤の精液に違いない。
嫌がる幸子に顔射をする、そんな妄想でもしながら射精したのだろう。
更に、他にも同じ様なシミが付いた写真があった。
それは、庭にいる幸子ではない。
黒いジャージ姿の幸子、僕には見覚えがあった。
昨年の町内運動会、僕は晶と少しだけ様子を見に行った。
焼鳥やたこ焼き等の出店もあって、それを目当てに行ったのだ。
その時見掛けた姿が、この黒いジャージを着ている幸子だった。
写真には運動場の芝生も写っているので、間違いないだろう。
そして、その写真も伊藤が求めているものだった。
幸子が中腰の体勢で、何かを持ち上げようとしている写真だ。
よく見ると、下に綱らしき物が見える。
そういえば昨年、幸子が綱引きに参加すると晶から聞いた記憶があった。
つまり、この写真は幸子が綱を持ち上げようとした瞬間のものだ。
競技に参加している家族を撮影する者は大勢いるので、伊藤がその中に混ざり混んでも怪しまれる事はないだろう。
しかし、伊藤の写真は家族が撮影する微笑ましいものとは違う。
幸子が中腰でムチムチな肉尻を突き出した瞬間、正に淫獣の欲望が詰まった写真だ。
その写真の、幸子の肉尻付近にも精液のシミがくっきりと残っていた。
背面立位で幸子を犯す、そんな妄想で射精したのだろう。
それ以外にも、精液のシミが付いた写真はいくつもあった。
幸子に対する執着心は、この部屋を見れば一目瞭然だ。
幸子がこれを見れば、どれ程の恐怖に怯えるだろう。
やはり、初めて伊藤を見た時に感じた暴虐的な雰囲気、そしてその危険な欲望が幸子に向けられているという僕の予想は当たっていた。
でもそれは僕と同じで、あくまでも妄想の中でだけ。
普通の人間なら、そう考える。
だが、この男は僕も考えつかない程の淫欲にまみれている事に、この後気付かされるのだった。
「どうだ、羨ましいコレクションだろ?
俺がどれだけこの女に夢中か分かったか。
でもな、正直これだけじゃ物足りなかったんだ。
それが今日、お前のおかげで最高の獲物が手に入ったよ。」
伊藤は幸子の下着を持ち、興奮の余韻に浸っていた。
そして、僕は再びこの男に驚かされる事になる。
伊藤は、また幸子の下着を顔に押し付けて匂いを嗅いだ。
「・・・まさか、あの女の脱ぎたての下着が手に入るとはな。
やっぱり、脱ぎたては違うぜ。洗濯済みの下着だけじゃ満足出来なかったからな。」
「えっ?」
またもや、予期せぬ発言だ。
今の言葉は、つまり伊藤は既に幸子の下着を持っているという事ではないのか。
「・・・洗濯済みって?」
「んっ、あぁ。言ってなかったな。
その言葉通りだ。あの女の下着は、とっくに持ってんだよ。
脱ぎたてじゃないけどな。」
伊藤は当然の様に言い放ったが、普通そんな事を出来るはずがない。
一体、どうやって幸子の下着を手に入れたというのだろう。
「そこにポリ袋があるだろう。」
玄関に、山積みで置いてあるゴミ袋の事だ。
「それは、あの女の家のゴミだ。
収集場に置いてったゴミを、俺が持ってきたんだよ。」
さすがにこの行動は異常すぎて、僕でも引いてしまった。
だが以前耳にした噂で、伊藤が収集場にゴミを捨てに行ったのにまたゴミを持ち帰っているのという話を、聞いた事があった。
その時は、まさか他人のゴミを持ち帰るなんて発想は誰も考えず、捨てるゴミの日にちを間違えたんだろうという笑い話位にしか思われなかった。
その謎が、まさか幸子の家のゴミを持ち帰っていたとは。
「そこから、ようやく1枚見つけてな。
脱ぎたてじゃなかったが、あの時は興奮してどうにかなりそうだった。
今でも大事に持ってるぜ。」
そう言うと、伊藤はパンツの中に手を入れた。
いきなり、何をするつもりなのだろう。
すると、そこからある物を取り出した。
「あっ!」
女のパンティー、幸子の物に間違いない。
シルク素材の白いパンティー、これには見覚えがあった。
以前まで洗面所の収納ボックスには、このパンティーがあったからだ。
しかし、いつの間にか無くなっていたので幸子が捨てたのだろうと思っていた。
もちろん捨てた事には違いないが、まさかそれが伊藤の手に渡っていたとは幸子も思いはしないだろう。
しかも、そのパンティーを自分のパンツの中に入れていたなんてやっぱり異常だ。
「いつもここに入れてんだけどな、さすがに臭いがきつくなってたんだよ。ゲヘヘッ!」
どうせ、今度は僕が盗んだ下着で楽しむつもりなのだろう。
幸子に卑猥な感情を抱く僕でも、さすがにこの男の淫欲は常軌を逸している。
本当に帰ろう、これ以上この男に関わればとんでもない事に巻き込まれてしまう、僕の直感がそうさせた。
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