【121】
何も言わず、立ち上がる野田。
もう、野田の目には幸子しか映っていない。
幸子にも、野田の異変が感じ取れた様だ。
「のっ、野田さん・・・駄目よ!!
冷静になって!!」
幸子は、必死に説得した。
伊藤、杉浦だけでなく、野田という新たな嫌悪する淫獣に犯されるわけにはいかないのだ。
何より、眠らされているとはいえ由英が目の前に居る。
愛する夫の近くで凌辱されるのを阻止しようと思うのは、妻として当然だろう。
しかし、野田の淫欲は既に限界を越えていた。
もはや、幸子を極上の獲物としか見ていない。
万事休す、狸寝入りをしている僕も思わず体に力が入った。
幸子に、ゆっくりと近付く野田。
鼻息の荒さが、極限の興奮度を物語っている。
「やっ、止めてっ!!
野田さん、あなたはそんな人じゃないはずよ!!
だから考え直しっ・・・・・ん゛っ、ん゛ー!!」
幸子の哀願も虚しく、遂に野田の淫攻が始まった。
幸子の両頬を固定する様に掴むと、量感のある魅惑的な唇へ吸い付いたのだ。
還暦を過ぎ、老年期を迎えている男が年増の女に襲い掛かっている光景は異常だった。
だが、その年増女は何処にでも居る様な女では無い。
絶世の美貌と肉感的な身体で男達を誘惑し、野田自身も以前から卑猥な感情を抱いていた牧元幸子なのだ。
その欲望を叶える事が出来るのだから、我を忘れるのも仕方が無いと思えた。
僕だって野田と同じ年齢になったとしても、幸子が目の前に居れば犯したくなるに違いない。
幸子という女は、老若問わずに男を狂わせてしまうのだと改めて気付かされた。
「ん゛ふー!!ん゛ふー!!」
「ん゛ー!!ん゛ー!!」
家中に、野田の荒い鼻息と幸子の儚げな悲鳴が響いていた。
前後の淫獣に挟まれた幸子は身動きがとれず、抵抗もままならない。
そんな様子を後ろで眺めている杉浦は、高みの見物とばかりに卑しい笑みを浮かべている。
すると、その杉浦が口を開いた。
「・・・あらら、俺は蚊帳の外だな。
それじゃあ、邪魔者は帰るんで後はお二人で楽しんでください。」
そう言って、杉浦は僕にニヤリと笑った。
最初から杉浦の狙いがこれだったのだと、僕は今気付いた。
自分が居なくなれば、野田も心置きなく幸子を凌辱するはずだ、と。
野田は、僕と由英が深い眠りについて起きないと思っている。
実質、幸子と2人だけの空間なら存分に犯すに違いないと杉浦は読んでいるのだ。
もちろんこの部屋の何処かに、後で野田を脅す為の隠しカメラを撮影しているのは間違いない。
幸子を犯す醜い淫獣の姿が、しっかり収められているだろう。
そして、全て計画通りに進んだのを確信した杉浦は牧元家を後にした・・・。
杉浦の車のエンジン音が遠くなり、辺りは静けさに包まれた。
午後11時過ぎ、普段ならこの田舎町は騒音も無く落ち着いた雰囲気を約束される時間帯だ。
牧元家も、晶が居ない今は夫婦水入らずの空間を味わっていただろう。
しかし、今夜の牧元家にそんな温もりに溢れた光景は無い。
杉浦が去った今も、野田は幸子の唇に吸い付いて離さなかったのだ。
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