【117】
杉浦の言葉に驚いたのは野田だけではなく、僕も同様だ。
『いいものを見せてやる。』
てっきり、その意味は杉浦自身が幸子を犯す様子を僕に見せびらかすものだとばかり思っていた。
それが、実は野田に凌辱させようとしていたのだから驚かずにいられるはずがない。
ましてや、幸子にとっては絶対に認めるわけにはいかない発言だ。
「ちょっ、ちょっと!何を考えてるの!?
馬鹿なこと言ってないで、早く離しなさいっ!!」
「そっ、そうだぞ!
どっ、どうして私がそんな事を!?
とにかく、奥さんを離すんだ!!」
幸子に卑猥な感情を抱いている野田も、さすがにこの誘惑に従う気は無い様だ。
だが、杉浦も引き下がらなかった。
「あれ、おかしいなぁ。
さっきから、いやらしい目でジロジロ見てたじゃないですか?
・・・いや、間違えました。
ずっと前からこの女、幸子と犯りたかったんですよね?」
「なっ、何を言ってるんだ君は!?」
「誤魔化さなくてもいいですよ。
もう、俺は気付いてるんで。」
その言葉に、野田は言い返せない。
「・・・まぁ、そんな事より少しは労って下さい。
この状況を作るの、苦労したんですから。」
「どっ、どういう事だ?」
「今日の宴会、幸子が考えたと思ってますよね?
残念ながら、実は俺が計画したものなんですよ。」
「えっ?」
「驚きました?でも、知らなかったのは町長だけじゃないんで安心してください。
俺と幸子以外は、誰も知りませんから。
もちろん、旦那もね。」
幸子は、項垂れる様に顔を逸らした。
逆らえず指示されていたとはいえ、由英を騙した事に負い目を感じているのかもしれない。
「とはいっても、他の奴らがなかなか帰らなかったのはちょっと焦りましたよ。
このままだと、町長は先に帰るって言い出すんじゃないかと思って。
いくら俺が運転手を買って出たと言っても、ここに居てもらう理由が無いと駄目でしょ?
それで、思い付いたんです。
腹が痛い事にしてトイレに篭れば、時間が稼げるってね。」
やはり、腹痛は何か裏があると思っていたが僕の予想は大方当っていた。
わざわざ野田の運転手を申し出たのも、杉浦の計画の一部だったというわけだ。
「もしかしたら、それにつられて皆も帰るんじゃないかって狙いもあったんですけど・・・。
まぁ、思った通りでしたね。
全員帰ったのを確認して、トイレから出てきたってわけです。
俺の苦労、分かってもらえますよね?」
何故、こうまでして幸子を凌辱する事を野田に勧めるのだろう。
確かに、野田が幸子に淫らな感情を抱いているのは明白だし、杉浦も以前から気付いていた。
それに、再び伊藤に幸子を犯す事を許した経緯も僕は知っている。
他の男に犯される幸子の姿が溜まらなく興奮する、だとすれば伊藤だけでなく野田にも考えが及ぶのは当然かもしれない。
しかし、それだけの為に杉浦が自らここまで動くだろうか。
杉浦の性格を熟知している僕には、疑問を感じずにはいられなかったのだ。
すると、僕はある事を思い出した。
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