【116】
「おい、牧元君?
・・・寝てしまったか。」
野田は、由英の体を軽く揺すった。
だが、由英が起きる気配は全く無い。
「・・・そろそろ、お開きだな。
さて、杉浦君といったか。
君の腹痛も、だいぶ良くなっただろう。
帰ろうか?」
「・・・・・その前に、僕からもお祝いさせてください。
とびっきりのプレゼントを、用意したんです。」
「プレゼント?」
その直後、野田は杉浦の言葉の意味を理解する事になる。
「えっ・・・あなた?」
残り僅かな食器を片付けに、幸子がやってきた。
「もう、だから飲み過ぎないでって言ったじゃない。
あなた、起きてっ!」
幸子が由英の肩を叩いても、反応は無かった。
そんな幸子を、すぐ間近に居る野田は無遠慮に視姦している。
帰る前に、目に焼き付けておくつもりに違いない。
しかし次の瞬間、予想だにしない状況が起きた。
それは、何かが起こる事を知らされている僕ですら驚かずにはいられなかった。
ここで、杉浦が動いたのだ。
表情は、淫醜なものへと変貌している。
もちろん、幸子に狙いを定めているのは言うまでもない。
(遂に来た!)
寝たふりをして横になっている僕は、思わず力んで体が小刻みに震えてしまった。
何度経験しても、この瞬間は慣れるものではない。
立ち上がった杉浦は、移動すると幸子の背後へ回った。
その異変に幸子が気付いた時には、もう遅かった。
中腰の様な姿勢で由英の肩を叩いていた幸子の両腕を掴むと、後背部へ強引に引き寄せ拘束したのだ。
「なっ、何してるの!?離してっ!」
まさか、寝ているとはいえ由英の目の前で仕掛けてくるなんて幸子も予想していなかったに違いない。
「やっ、止めてっ!」
何とか振り解こうとするが、杉浦はびくともしない。
幸子が必死に抵抗するのも、当然だ。
ここには、由英の他に同じく酔い潰れて寝てしまったと思っている僕と野田まで居る。
更に、野田に至ってはこの状況をしっかりと目撃されているのだ。
そして、その野田はいきなりの出来事に困惑していた。
幸子と杉浦の関係性を知らない者なら、理解出来るわけがないだろう。
すると、杉浦はそんな野田へ驚愕の一言を発したのだった。
「・・・町長、これが僕からのお祝いです。
この女を、思う存分好きにして下さい。」
「なっ、何だって!?」
あり得ない言葉で、空気は異様なものとなった。
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