【113】
以前までは勝気な性格で、伊藤や杉浦の様な淫獣も寄せ付けなかったのに、現在ではどうする事も出来ない。
「・・・そんなに身構えなくても、俺は何もしないよ。
今夜は・・・だけどね。」
杉浦の言葉に、幸子は僅かだが安心した表情を見せた。
しかし、本当に何も起こらないはずがない。
既に、杉浦の計画は動き出しているのだから・・・。
「さて、もう時間だな。
声を掛けてくるか。」
杉浦は立ち上がると、僕達から離れた。
そして、向かった先に居たのは野田町長だった。
「町長、お帰りの時間は11時でよかったんですよね?」
「ん・・・あぁ、もうそんな時間か。
それじゃあ、そろそろ・・・。」
「すいません、実はちょっとお腹を下したみたいで。
トイレに行ってくるので、もう少し待っててもらえますか?」
杉浦は、野田に了解を得るとトイレへ向かった。
腹痛が事実なのかは不明だが、トイレに向かったのは本当の様だ。
すると、2人のやり取りを聞いていた周りの男達も動き出した。
「俺達も、そろそろ帰るか。
早く帰ってこいと言われてたんだ。
こりゃあ、母ちゃんに怒られるな。」
「あぁ、 まずいぞ。
俺も、母ちゃんに迎えに来てもらわないと。
誰か、一緒に乗って行く奴いるか?」
それまで帰る雰囲気など全く無かったのに、一斉に自宅へ電話を掛けて迎えを頼む男達。
宴の場では時間を忘れてなかなか帰らないと聞くが、その通りだった。
人間の心理とは、こういう事なのかもしれない。
だが、僕にはこの状況が杉浦によって仕組まれた様に思えてならなかった・・・。
それから時刻は更に30分程進み、あっという間に午後11時を回っていた。
家族が迎えに来た者も数名居て、客間には由英と野田の他に2、3人だけだ。
僕は、あれからずっと杉浦の指示通り狸寝入りをしている。
体を横向きにし、薄目を開けながら客間の様子を窺っていた。
体の上には、タオルケットが掛けられている。
あの後、幸子が持ってきて掛けてくれたのだ。
罪悪感で一杯なのは、言うまでもない。
その幸子はと言うと、まだ後片付けが終わっていない様だ。
10数人分の料理を1人で作り、大量の皿洗いなどを済ませなければいけないのだから当然だろう。
台所に居る幸子を眺めながら、僕は股間の膨らみを抑えきれないでいた。
杉浦は、未だにトイレから戻ってこない。
もしかして、本当に具合が悪いのだろうか。
客間でも、杉浦の話題になっていた。
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