【110】
「・・・心配するなって。
俺を、伊藤みたいな馬鹿と一緒にするんじゃねぇよ。
幸子の事も、ちゃんと考えてるさ。」
杉浦は僕が言うまでもなく、幸子の精神状態が崩壊しない様に対策をとっているらしい。
伊藤と週に1日ずつ、それも由英が仕事から帰ってくるまでの日中の間だけ幸子を犯す事が出来る。
しかも、幸子は喫茶店のアルバイトが週に4日程あるので休日の2日間で行う。
それが、杉浦の考案した計画だった。
昨年の伊藤は、淫欲のまま毎日幸子を犯していた。
確かに、昨年に比べてみると多少の自由は与えている様だ。
夜は解放して由英との夫婦の時間を過ごせているので、幸子が正気を保つ余裕もあるだろう。
それから伊藤の暴走も心配だが、厳しく言いつけて押さえ込んでいるらしい。
「本当は、あいつなんかに汚させるのは嫌なんだけどな。
まぁ、何かと利用できるだろう。」
幸子を犯した映像を持っている杉浦に、やはり伊藤は逆らえない様だ。
いつ警察に通報させられるか分からないという弱味を握られている伊藤にとって、杉浦は相当恐ろしい存在なのかもしれない。
「今日は幸子に手を出せない日だから、何処かに旅行に行くって言ってたか。
全く、生活保護の不正受給者は気楽なもんだな。
とんでもねぇクズだぜ。」
そういえば、伊藤の家の前を先程通り掛かった時は明かりが消えていた。
杉浦の言う事が本当なら、今夜伊藤が現れる心配は無いだろう。
とはいえ、この宴会は杉浦が仕組んだものだ。
わざわざ僕を呼んでおいて、何もしないとは思えない。
何か良からぬ計画を立てている、幸子を襲う杉浦の淫らな視線がそれを物語っているのだ。
きっと杉浦から動くはずだと、僕は注視した。
しかし、気付けば時刻はあっという間に3時間が過ぎた。
午後10時、周りの男達は酔っ払いどんちゃん騒ぎだ。
由英や野田も、随分酒が進んでいる。
幸子は、食べ終えた食器を片付けては皿洗いなどの掃除で忙しそうだ。
約3時間、あまり僕達には近づかなかった。
もちろん、杉浦を警戒しているからに違いない。
ただ杉浦もその間、幸子に接近する事は無かった。
僕もずっと注意深く見張っていたが、おかしな行動は取っていない。
それに、あれ以降幸子の事に関して杉浦は何も語らなかった。
僕が聞こうと思ってもはぐらかされ、今に至っている。
高校時代の話や自身の仕事の話など、僕には全く興味の無い話を飽きずに続けていた。
もしかしたら、本当に宴会をする為だったのではないか。
そうであってほしいと、僕は強く切望した。
だが、やはり淫獣は虎視眈々とその時を待っていたのだった。
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