【15】
「・・・しかし、友達の母親をそんな目で見てたなんてなぁ。
お前の事、息子みたいに可愛がってたのになぁ。
奥さん、知ったらショックだろうなぁ。
最低な野郎だな、ゲヘヘッ。」
確かに正論だが、僕はその言葉に我慢出来なかった。
「おっ、お前だって一緒じゃないか!
しっ、知ってるんだぞ!
お前もさちっ・・・おばさんをそんな風に見てるんだろ!
今日だって、あんな所にいるなんておかしいじゃないか!
お前だって最低な事考えてたんだろ!」
思わず、言い返してしまった。
この男を怒らせたら、どんな行動をとるか分からない。
僕は、殴られる事も覚悟した。
しかし、伊藤はピクリとも表情を崩さなかった。
そして、こう言い放った。
「・・・あぁ、そうだ。そうに決まってるだろ。
俺は、あの女を滅茶苦茶にしてぇ。当然だろ?」
伊藤は、あっさりと本性を晒け出した。
更に、伊藤は続けた。
「ここに引っ越してきたのは、3年位前か。
色々あってそれまで住んでた所に居れなくなってな。
金もねぇし、しょうがねぇから物価の安い田舎のこの辺りでいい物件が無いか探してたんだよ。
正直、この家は止めようと思ったぜ。
こんな汚ねぇ家に誰が住むかって、すぐ別の空き家を探しにいこうとしたんだ。
その時だよ、あの家から出てきたのがあの女だった。
あの衝撃は今でも忘れねぇぜ。
こんな田舎にとんでもねぇ上玉が隠れてやがった、ってよ。
それで、すぐこの家に住む事を決めたんだ。」
この男の身の上話に興味は無かったが、まだ話は終わらなかった。
「これまでもいい女は見てきたが、あの女は別格だ。
ずっとあの女が頭から離れねぇ。・・・俺は決めたよ。
絶対にあの女を滅茶苦茶に犯してやるってな。
それで犯す機会を逃さない為に、仕事にも行かずに生活保護で暮らしてるってわけだ。」
「えっ?」
僕は、その言葉に疑問を感じた。
生活保護は働くのが困難な人が受給出来るはず、あまり詳しくはなかったがそれ位の知識はあった。
だが、今の伊藤の発言はまるで幸子を犯す為に働くのを止めて生活保護を受給していると言っている様だ。
確か伊藤は事故で足が不自由になり仕事が出来ないから、生活保護を受給しているという噂だったはず。
(・・・あっ!)
そういえば、さっきこの家まで歩いてきた時に杖をついていなかった事に気付いた。
それに以前、伊藤が普通に歩いていたという噂も思い出した。
僕の疑問に気付いたのか、伊藤は語りだした。
やはり足はどこも悪くなく生活保護は不正受給していた、もちろん普通ならそんな事は通用しないが伊藤にはそれが出来た。
何故かというと、先程伊藤が言っていた3年前に住んでいた場所で起こした事件がきっかけだった。
その事件とは、近所に住んでいた人妻の下着を盗もうと忍び込んだという今と何も変わらない行為だった。
結局バレてしまい、警察にも厄介になった後その地域には住めなくなり引っ越しを余儀なくされた。
ところが、そんな時に思わぬ出会いがあった。
下着を盗もうとした時、1人の男と出くわしたのだがその男も近所の住人で更に医者だった。
何と、その医者もその人妻に淫らな感情を抱いており下着を盗もうと忍び込んでいた。
だがバレたのは伊藤だけで、その医者の存在には気付かなかった。
伊藤はその男が近所の医者だと知っていたので、警察に話そうと思った。
しかし、伊藤はそれを止めた。
何故なら、悪知恵を働かせた伊藤はその医者を脅迫して強請ろうと考えた。
「まぁ、その人妻もいい女だったから無理もないがな。
その後、追い出される羽目になった俺はここへ辿り着いてあの女に出会った。
それで、ある事を思い付いたんだ。
あの医者に診断書を偽装させよう、ってな。そうすれば生活保護の申請が通る。
本当は金を強請るつもりだったんだが、金なんてどうでもよくなったよ。
もちろん、そいつは拒んだ。そんな事が外に洩れたら大問題だからな。
それに下着を盗もうとした証拠も無かったし、そいつは強気だった。
でも、俺の執念勝ちってやつかな。
周りに言い触らしてやるって脅迫したんだ。そいつはすんなり態度を変えたよ。
評判は、医者にとって致命的だからな。
それで、1度だけ不正に手を貸すって事で話はまとまった。
後はトントン拍子に話が進んで、簡単に生活保護を受けれる事になったってわけだ。
だから、俺の体はどこも悪くない。
どうだ、凄いだろ?」
伊藤は、自慢気な顔で言った。
要するに、悪知恵を働かせて不正を犯した最低な男というわけだ。
しかし、幸子がそれほどまで夢中にさせる女だという事は、否定出来なかった。
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