【106】
幸子が僕達に背中を向け、台所に戻ろうとした時だ。
前はエプロンを掛けているので身体のラインが判然としないが、後ろ姿はしっかりと確認出来る。
下半身の扇情的な肉付き、その中でも視線が釘付けになったのは肉尻のボリュームだった。
2つの丸みを帯びた肉尻は以前と変わらず、豊乳と同様揉み応え十分に違いない。
そして、その淫らな視線は僕だけではなく周りの男達からも送られていたのだ。
1番奥に座っている僕には何とも異様な光景に見えたが、同時に納得もさせられた。
やはり、幸子に卑猥な感情を抱く者達はまだまだ存在するのだ、と。
しかもその者達は由英の同僚で、由英は気付いていない。
恐らく、幸子自身も気付いていないだろう。
そう思うのには、根拠があった。
何故なら、杉浦と伊藤の淫獣としての不気味な雰囲気に比べると、弱かったからだ。
この者達からは、まだ淫獣というだけの醜悪さは感じない。
現に幸子の様子も杉浦、伊藤と対峙した時の様に嫌悪感を露にする事は無かった。
要するに、それだけ2人の幸子に対する淫悪な欲望は常軌を逸しているというわけだ。
とりあえず、ここに居る者達はそれほど警戒しなくても大丈夫だろう。
少しでも、幸子に普段通りの生活を送ってほしい。
そう祈る事が、僕に出来るせめてもの償いだった。
だが、幸子にとっての新たな地獄は、目の前に迫っていたのだ・・・。
夜7時を過ぎ、外は先程より暗闇に包まれようとしていた。
幸子は、作った料理をどんどん運んでくる。
「洋太は、これで我慢しなきゃ駄目よ。」
「うっ、うん。」
周りはお酒を飲む中年男達ばかり、幸子が微笑みながら僕に持ってきたのはオレンジジュースだった。
もちろん幸子も未成年なのは分かっているが、中年男達に囲まれた僕を気遣っているのかもしれない。
間近で見る幸子の魅惑的な美貌、肉感的な身体、更に芳しい大人の女の香りが僕の股間を刺激する。
やはり男であれば欲情するのは免れない、そう認めざるを得なかった。
そして、僕の心情に呼応するかの様に玄関の開く音が聞こえた。
「おっ、来たんじゃないか!?
こっちですよ、こっち!!」
客間にいる男達が、玄関の方へ叫んでいる。
皆、客間と玄関の通り道である居間に視線を送った。
すると、1人の人物が姿を現した。
「いらっしゃいました、本日の主役の登場で~す!!」
客間の男達が、現れた人物を盛大にもてなす。
その人物とは、数ヶ月前までここにいる由英達が働く会社【野田土木興業】の社長を務め、現在は町長としてトップに君臨する野田要治だった。
※元投稿はこちら >>