【66】
やはり、僕の思った通りの展開になってしまった様だ。
ビデオカメラに視線を向け、睨み付ける幸子。
この憎悪が込められた表情は、伊藤に犯された時と同じだ。
更に、口火を切ったのは幸子だった。
「・・・こんな所に呼び出すなんて、どういうつもりなの!?
もう、卒業式は始まってるのよ!」
幸子の口調は、表情と連動して怒気が含まれている。
しかし、それに返答した声に全く悪びれる様子は無かった。
「いやぁ、悪いとは思ってますよ。
でも、わざわざこんなに離れた場所を選んだのはおばさんの為でもあるんですけどねぇ。
ここなら誰も来ないし、音楽室だと防音対策もしっかりしてるでしょ。
万が一、声が漏れる心配も無い。」
やはり、杉浦の声で間違いない。
薄ら笑いが包まれた言葉に、淫悪な企みがあるのは明白だ。
杉浦は、更に続けた。
「それと、白々しい事は言わなくていいですよ。
こんな所に呼んだ理由くらい、もう分かってるでしょ?」
もちろん、幸子も杉浦の狙いには気付いているだろう。
それでも、こんな状況だからこそ強気に対応しているのかもしれない。
だが、主導権は握らせまいと杉浦が続けざまに発した。
「まぁ、いきなりあんな動画見せられたら驚くのも無理ないか。
持ってるのは、伊藤だけだと思ってたんでしょ。
・・・・・おばさんが、伊藤に犯された証拠映像。」
どうやら、卒業式前に杉浦が幸子に携帯電話を見せていたのは、その映像の様だ。
それなら、あの時に幸子の表情が険しくなったのも頷ける。
杉浦は、ポケットから携帯電話を取り出した。
画面が携帯電話を映し出すと、動画が流れ始めた。
幸子が伊藤に犯された時、僕が撮影した映像だ。
丁度、剛棒を打ち付けられている時で、幸子の喘ぎ声が音楽室に大音量で響いた。
「ちょっ、ちょっと何見てるの!」
幸子の怒声を無視し、杉浦は独り言の様に話し続けた。
「うわぁ、すげぇ。
やっぱ、何回見ても迫力あるなぁ。
・・・まさか、友達の母親があんな男に犯されるなんてねぇ。」
画面は、幸子を映し出した。
幸子の表情は屈辱感を滲ませ、杉浦を睨み付けている。
自身が犯されて喘ぐ姿を見られている状況は、堪え難いものだろう。
そして、幸子のそんな姿が杉浦にはたまらなく興奮するのかもしれない。
鼻息の荒さで、それは充分に伝わってくる。
すると、杉浦は思わぬ発言をしたのだった。
「・・・一応、言っておくか。
おばさんも気付いてると思うけど、これを撮影したのは俺なんだ。」
事実とは異なる発言で、僕は思わず驚いてしまった。
この映像を撮影したのは僕なのに、何故わざわざ自分が罪を被る発言をしたのだろう。
しかし、その理由はすぐ判明した。
※元投稿はこちら >>