待合せ場所のシティホテル。
先に黒崎を見つけたのは敬亮の方だった。黒崎は濃紺のタイトなスーツ姿でロビーのソファに座っていた。胸元に目印の赤いポケットチーフを添えている。
『こんばんは。黒崎さんですね?』
敬亮が静かに声をかける。
『はい、黒崎です。敬亮さんですか?』
『ええ、そうです。今日はどうぞよろしくお願いいたします。こっちは妻の結唯です』
『こんばんは。こちらこそよろしくお願いいたします』
互いに挨拶を交わし、敬亮の半歩後ろに控えていた結唯も夫に続きかるく会釈をした。
敬亮はホテルの1階にあるラウンジを予約していた。何度か経験しているとはいえ、初対面の男相手に多少なりとも緊張している結唯を気遣ってのことだ。
ウェイターに案内され、3人は窓際奥に取られた予約席に座る。
3人はホットコーヒーを頼みしばし歓談する。黒崎は話し上手で、結唯の艶やかな容姿と美貌をいやらしくなく褒める。次第に結唯にも笑顔がこぼれ出し、緊張もほぐれてきたようだった。
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