休日出勤が続いて、代休を取る事にした。業務に支障がないように、社内メールで予告を発信した。しばらくすると、智子から電話が入った。
「私もその日休もうかなぁ。有給たまってるし。」
「何かあるの?」
「そっち行っていい?」
「いいですよ」
業務中の社内で、思わず丁寧な言葉になった。電話の向こうで智子は笑いながら
「ごめんなさい。こっち、今誰もいないから。会いに行ってもいいの?」
俺は資料を見るふりをしながら
「大丈夫です。出来れば、9時か10時。詳細をメールで送って頂ければ。」
「分かったぁ。メールするね」
ゆっくり会える・・と思っていた。
当日。待ち合わせ場所で智子と合流すると、智子は
「行ってみたいトコあるんだけど・・」
「いいけど・・遠いの?」
「所在地は市内になってるから、そんなに遠くないと思うんだけど・・」
俺の車で行ってみる事にした。どうやら雑誌に載っていた滝が見たいらしい。その場所は、以前に子供と来たことがあったが、口にはしなかった。
今日、会社を休む事自体を家には伝えていなかったから、普通に出勤するようにスーツに革靴だ。
滝までアスレチックのような山道を30分位歩くはず。スーツ姿のカップルが山道を歩いている。どう見ても怪しい。
平日のせいか、幸い山道では誰ともすれ違わなかった。
滝の場所に着くと、木々が途切れ大きな石だけが転がり周辺が開けた。
「すごーい」
智子が声を上げた。
大きな木の陰の岩に2人で座った。ここなら人が来ても目立たない。
「どーお?」
「うん。綺麗。連れてきてくれてありがとう」
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