「奥さん・・・あんた馬鹿だよ・・・せっかくチャンスをやったのに・・・」警察官が帰ると、常田は急に態度を変えて、そう言いました。そして、胸元からスマホを取り出すと電話をかけ始めました。「ハイ・・・終わりました・・・家にいます・・・わかりました・・・待っています・・・」常田は電話を切ると、再び、椅子に腰かけました。「もう、佐藤とは終わりだな・・・というか、あなた・・・すべて終わりになるよ・・・」やがて、常田は立ち上がると、部屋を歩き回り始めました。しばらく、何かを探していた常田は「ああ・・・ここだ・・・」と言いながら、テレビの後ろから何か黒い小さいものを取り出しました。「あんた、何で今朝、警察がいたのか・・・不思議に思っただろう?まるで、あんたらの行動が全部ばれて、警察が待ち伏せしていたように・・・」気が動転して、正直、そこまで考えていませんでしたが、言われてみれば確かに常田の言う通りです。「これだよ・・・これ、何だと思う?・・・わかるかな?」常田は先ほどの黒いボックス状のものを手にとりながら言いました。よく見ると、それはコンセントのようなものでした。「これ、盗聴器だよ・・・つまり、この部屋の会話は全て筒抜けだったということ・・・だから、あんた達の計画は全て、わかっていたというわけ。」何と言うことでしょう・・・今考えると、一昨日、夫がいきなりこのアパートを訪ねてきた時、私が混乱していることをいいことに、夫が仕掛けたものだと思います。そして、計画を知りつつ、わざと朝まで待った、そして行動させ、それを動かぬ証拠にして、私の目の前で佐藤を逮捕まで追い込む・・・いかにも夫らしい狡猾なシナリオです。私たちは、夫の仕掛けた罠にまたしてもかかってしまいました。
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