この日の夜、布団の中で私を抱きながら、いきなり佐藤が言いました。「美穂・・・よく聞け・・・いろいろ考えたんだが・・・やっぱり、オレはあいつの言う通りにはできない・・・お前をアイツのもとへ帰すことはできない・・・」「・・・でも・・・」「いいから聞け・・・だとすると、オレ達に残された道は一つしかない。二人でとにかく遠くへ逃げるんだ・・・それしかない・・・いいか?・・・お前、ついてきてくれるか?」「・・・私は・・・いいけど・・・本当に、それでいいの?」「・・・ああ・・・それしかない・・・」「でも、逃げられるかしら?・・・あの人から・・・」「俺にもわからん・・・まあ、やってみるしかないだろう・・・明日の明け方に実行しよう・・・朝5時に、アパートの前にタクシーを呼んでおく・・・これから、当面、必要なものを持っていく支度をするんだ・・・例のスマホは置いておけよ。それから、ゆっくり風呂に入っておけ・・・しばらくどうなるか、わからないぞ・・・」こうして私たちは、翌朝の逃避行に備えて、アパートでの最後の夜を過ごしたのでした。
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