でも、そんな私の幸せは長くは続きませんでした。佐藤と同棲を始めてから約一か月が経った昼間のこと、玄関のチャイムが鳴り、ドアを開けると、そこには何と夫が立っていました。夫と目があった瞬間、驚く私の顔にいきなり夫の平手が飛んできました。それは目がくらむくらい強烈な平手うちでした。そして私がひるんだ隙に夫は無言で部屋に入り込んでしまいました。予期せぬことの連続に、私の行動は完全に後手にまわりました。「ここが、お前たちのやり部屋か。」夫は部屋の中を見渡しながら、そう言いました。「どうせ、毎晩、ここで抱き合いながら、俺のことを馬鹿にしているんだろう。さぞや、俺からお前を寝取った佐藤は気分がいいだろうな。そして、お前は夫と娘を捨て、そんな男との肉欲に走ったどうしようもない淫売な女だ。・・・お前たちは本気で俺を怒らせた。俺をコケにした罰は必ず受けてもらう。まさか、お前、このまま幸せになれるなんて思っていなかったよな。・・・お前の居所はもうとっくにわかっていたよ。気づかなかったらしいが、お前に渡たしたスマホには位置を知らせるGPSアプリをダウンロードしておいたからな。そうしておいて良かったよ。お前、この一か月間、俺がどんな気持ちでいたかわかるか?・・・本当はすぐにでもここへ乗り込んで、お前たちの生活をぶち壊したかったよ。だが、ぎりぎりのところで思いとどまった。・・・俺はお前たちへの復讐のために、この一か月間、全てをつぎ込んだ。お前たちの仲を引き裂くためには、どんな手段もとる。お前が犯した罪の大きさを思い知らせて、自分がとった行動を絶対に後悔させてやるからな。」夫は感情を露わにして、 そう捲し立てました。「佐藤は何時に帰ってくるんだ?」「・・・6時頃です。」「佐藤が帰ってきたら、おとなしく待ってろと伝えろ。いいか、奴が帰ってくるまで、余計なことを知らせるな。それから言っておくが逃げても無駄だ。お前のことはいつでも見張っている。さっきも言ったように、俺はお前たちを破滅させるためには手段を選ばない。たとえ破産してでも、絶対に追い込む覚悟でいる。それから、お前たちをどうにでもできるカードは全てこちらが握っている。その準備のために一か月費やしたんだ。」夫はそう言うと、帰っていきました。私はしばらく呆然と立ち尽くしていました。夫がいる間は、恐怖と緊張で気にもとめられませんでしたが、夫が帰ってしばらくすると、平手打ちされた頬と耳たぶがヒリヒリと痛みました。そして、頭の中では、夫が吐き捨てるように言ったセリフを必死で思い返していました。私には、その一言一言が単なる脅しではなく、全て夫が本気で実行することのように思えました。
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