そんなある日、鹿児島で暮らす夫の父が病で倒れ、入院したという知らせが入りました。幸い、大事に至る病ではないということでしたが、高齢ということもあり、久しぶりに孫の顔も見せたいということで週末に家族で鹿児島まで一泊二日の予定でお見舞いに行くことになりました。娘の香奈は家族で旅行できるということで無邪気に喜んでいました。私も、娘のそんな姿に内心ホッと胸を撫で下ろしていました。しかし、
その夜、娘が寝た後、夫が私に言った言葉は、まさに非情なものでした。「お前は鹿児島、行かなくていいから家に残れ・・・香奈には、急に具合が悪くなったとでも言えばいい・・・親父たちには、適当に言っておく・・・お前だって、今さら、親父やお袋に、いい妻、いい母のふりして会えないだろう・・・」「・・・」「なんだ、まさか、お前、一緒に行けるなんて思っていたわけではあるまい・・・たった一泊だが、もし寂しかったら、何とか佐藤の居所でも探して会って、久しぶりに抱かれてこいよ・・・何も、家にいる必要はないぞ・・・そうしてくれた方が、こちらとしては話が早くなる・・・」「・・・」私の頬を涙が流れました。夫は私が佐藤の居場所を知らない、だから会うことなど絶対にできないと思っているからこそ、そんなことが言えたのです。そして夫は、苦しむ私の姿を見ながら、私や佐藤に対する憎しみの心を満たしていたのです。そして夫はさらに追い打ちをかけるように、トドメヲさすような言葉を口にしたのです。「なんだったら・・・そのまま帰ってこなくていい・・・そのかわり離婚届にはハンを押していけ・・・」「あなた・・・いくらなんでも・・・ひどい・・・」私の目から大粒の涙が零れ落ちました。もう涙が止まりませんでした。確かに、私がしたことは、取り返しがつかない夫への背信行為でした。夫を深く傷つけたことに間違いはありません。でも、私にこうならない道があったのでしょうか?確かに、夫に相談できないままズルズルと佐藤との関係を続けたのは私の大きな過ちでした。でも、最初の段階では、私にとって、佐藤はまさに「悪魔のような男」であり、その言いなりになるしかなかったのです。私は、ただ、怖かったのです。佐藤が、そして家族の幸せが崩れるのが・・・。それにもし、私が、佐藤に犯された翌日の朝、佐藤とのことを相談したとして、果たして夫は、それをしっかりと受け止め、助けてくれたでしょうか?いえ、私にはそうは思えませんでした。完璧主義者の夫にとって、他人に汚された女を妻として認めることなど、絶対にできなかったと思うのです。つまり私には、結局、選択肢はなかった・・・あの日の夜、この家で佐藤に犯された時点で、私の運命は決まっていたのかもしれません。
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