あの日、郵便ポストを開けると、そこには私宛の一通の封書が入っていました。家に入って封を開けると、それは佐藤からの手紙でした。そこには短く、近況と私への思い、そして新しい住所が書き記されていました。手紙によると、佐藤は会社を解雇されてから1ヶ月近く、無気力状態に陥ったそうです。その後、マンションを引き払い、現在は電車で20分ほど離れた町のアパートへ引越し、定職につかずアルバイトで生活しているようでした。私は、その手紙を机の引き出しの奥深くにしまいました。相変わらず、夫の私に対する冷たい仕打ちは続いていました。夫は会社から帰ってくる度に、娘に聞こえないところで決まってこういいました。「なんだ・・・まだ、いたのか・・・」と。また、夫は以前に比べると、飲んで帰ってくることが多くなり、家で食事をすることが少なくなりました。「あなた・・・お食事は?」「ああ?・・・いらない、食べてきた・・・それに・・・お前のような不潔な女がつくった食事なんか・・・食べる気にもならない・・・もう、俺のぶんはつくらなくていいぞ・・・」私は、そう言われる度に、涙を流しながら食事の処分を繰り返すのでした。やがて、夫の帰りは最低、週に一度は12時を過ぎるようになり、その日に限って、夫のシャツからは、明らかに女性の香水の香りがするのでした。「なんだ・・・何か言いたげだな?」「・・・いいえ・・・」「そうだよな・・・・お前が、何か言う資格なんてないよな・・・」「・・・」「まあ、気づいているようだから・・・この際、はっきり言っておくが・・・俺は今、付き合っている女性がいる・・・お前もよく知っている女性だ・・・もちろん、カラダの関係もある・・・今日も、ついさっきまで、二人で抱き合っていた・・・俺はお前のようにコソコソしないぞ・・・全部、話してやる・・・」その後、夫から聞かされた相手の女性とは、会社で私の一つ年下の後輩だった朱美でした。風の便りに、朱美は昨年、離婚し、子供がいなかったので現在は独り身だと聞いていました。夫が、どこで朱美と再会し、そのような関係になったのかはわかりませんが、いずれにしてもOL時代、私が可愛がりよく世話をした後輩だけに、正直、事実を聞かされてショックでした。こうして、私はますます孤独感を深めていったのでした。
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