全ては夫の計画通りでした。夫は間もなく私たちがいる台所に入ってきました。「先輩!・・・なんでここに?!」夫は、佐藤の姿を見ると、さも驚いたふりをして大声を出しました。佐藤の顔が強張りました。「美穂が言っていたのは・・・本当だったんだ・・・先輩、なぜ?・・・こんなストーカーみたいなことを?」一瞬、佐藤が私の顔を見ました。「美穂・・・こっちへ来い・・・」私は夫に言われるまま、入り口に立つ夫の傍に行きました。「美穂・・・コイツ・・・勝手に入って来たんだな・・・」私は佐藤の顔を見てそれからゆっくりと頷きました。すると、夫は私の手から包丁を取り上げると言いました。「そうか・・・美穂・・・110番通報しろ・・・」「えっ?」私は、夫の予想だにしなかった言葉に驚きました。これは昨日の打ち合わせにはなかった展開でした。「早く・・・居間の電話からかけるんだ・・・」佐藤は俯いたまま、黙っていました。私に警察へ連絡させる・・・これこそ夫の立てたシナリオ「復讐」の一部だということが、この時、ようやくわかりました。私は少し後ろ髪が引かれる思いを持ちながら、仕方なく台所と隣り合わせの居間へと移動すると、受話器をとったのでした。私は移動する時、ちらっと佐藤の横顔を見ました。佐藤は俯きながら、苦笑いの表情を浮かべたように思えました。『やられた・・・はめられた・・・』そんな佐藤の気持ちが伝わってきました。
※元投稿はこちら >>